第617話 馬型のゴーレムと元魔王羊
ヘンリックさんたちは、せっかく作った馬車に押し込められて、エイデンとともにどこかに飛んで行ってしまった。
どこに行くのか聞いたら、内緒だ、とご機嫌な笑顔を見せてたエイデン。
そう言われると気になるのが人の性というものだけれど、聞く間もないうちに飛んで行ってしまったから仕方がない。
ギャジー翁も一緒に行きたそうにしていたけれど、ヴィッツさんに馬車の改良をせかされて、家に戻ってしまった。より一層、よい馬車ができればいいとは思う。
そして残されたのは黒いゴーレムの馬。
後でギャジー翁かヴィッツさんが片づけるんだろうと思い、ログハウスへ戻ろうとしたら。
パカリ
ゴーレムが動いた。
「は?」
――いやいやいや。そんな馬鹿な。
そう思ったんだけれど……やはりエイデン仕様。なぜか私の後をついて回るようになった。
懐かしのエイデンのストーカー時代を思い出して、げんなりする。
慌てて家の中に入ってしまったギャジー翁を呼び出すと、完全にエイデンの魔力一色になってしまっているので、ギャジー翁の言うことは聞いてくれなくなったらしい。
だったら私だって魔力なんかないし、と言ったら、ニヤーと笑って「大丈夫です」とトントンと肩を叩かれた。
結局、私がスーパーカブを走らせて家に戻る時も、後ろを軽快に馬型のゴーレムがついてきてしまった。
今は私の言うことは聞いて、今はログハウスの上、山の中の厩舎にいる。
さすがに剥き出しで置きっぱなしにするわけにもいかないので、厩舎にいるように言ったら、言うことを聞いてくれたのだ。
だったら村のほうにいてくれたっていいじゃない、と思うのだが、コイツにはコイツなりの理由があるのかもしれない。
――いや、エイデンだし、何か仕掛けでもしてるんじゃ。
改めてゴーレムの周りを見て回っていると、マリンが元魔王羊のセバスをつれてやってきた。
『まぁ。これはエイデン様の魔力ね!』
マリンも興味津々にゴーレムの周りをウロウロしだした。
これが生きている馬だったりしたら、踏まれやしないかと心配するところだけど、ビクとも動かないから安心ではある。
一緒に来ていた元魔王羊のセバスは、ムフーと鼻息を吐いて偉そうだけど、見上げている時点で、少し残念。
「なんかついてきたから、しばらくここに置いておくけど、悪戯とかしないでね」
『いやぁねぇ。サツキ。私はそんなことしないわ』
そう言ってチラリとセバスに目を向けると、そのセバスはムヒヒヒと上唇を剥いて歯を見せている。あれは威嚇か何かなんだろうか。
『……セバス、エイデン様に歯向かえないからって、ゴーレムにあたるのはやめなさい』
「……メェェェ」
肝心の馬型のゴーレムは無反応だし、大好きなマリンに叱られて、ちょっとカッコ悪い。
フフフ、と笑いながら、私はゴーレムの肌を触ってみる。
実際に村で飼っている馬と違って、温かみはないし、柔らかくもないし、ゴーレム自身、身じろぎもしない。
――これだったら、乗馬の練習なんかもできたりして。
ぺしぺしとゴーレムを叩きながら、ふと、そんなことを思ってしまった。





