第611話 他の国の噂話と、エルフたち
辺境伯領の領都と、王都の噂話の他にも、他の国の噂話も教えてもらった。
獣王国では、最近、帝国からあまり柄の良くない冒険者が流れ込んできていて、なかなか物騒になってきているらしい。
その帝国では、春先に皇帝が亡くなったとかで皇位争いが起きているとか、高位貴族の当主の多くが流行病で亡くなったとかで、帝国内が荒れているらしい。
私自身、病気なんて、こちらに来てからかかってないし、村でも病気になったなんて話を聞かない。妊娠は病気ではないしね。だから、流行病なんてワードを聞いて、少しだけ怖くなる。
まぁ、オババが色々薬を作っているようだし、ここ最近はレィティアさんも手伝っていた。最悪何かあっても、うちには最強のブルーベリーがある。きっと……たぶん……大丈夫だ。
「やぁ。戻ってきたのか」
レディウムスさんから、色んな噂話を聞いている所に、ギャジー翁とヴィッツさんがやってきた。
いつ見ても、『翁』と呼ぶには相応しくないほどの若々しさだ。
一応、レディウムスさんのほうが100歳ほど年が上らしい。そう言われれば、若干、レディウムスさんのほうが中年っぽい感じはするけど、100歳差があるとか、見た目では全然わからない。
「ギャジー、久しぶりだな」
「何か面白そうな物は仕入れられたかい」
「お前さんが気に入りそうな物などあったかな」
苦笑しながらレディウムスさんは私たちに小さく会釈をすると、ギャジー翁たちを連れて荷馬車のほうへと向かっていく。
「さて、ディアナ、私たちもそろそろ戻らねばなりませんね」
「あー、もう少し、ここにいたかったなぁ」
レィティアさんがクスクスと笑い、ディアナさんは口を尖らせてぶーぶー言っている。
「いい加減戻らないと、旦那様が帰ってこなくなってしまうわ」
「えぇぇぇ」
「あなたの好きな、旦那様のお煎餅が食べられなくなるわよ?」
「……それは、ちょっと嫌かも」
ちょっとなのかいっ! と内心ツッコむ私。そもそも、煎餅のほうが求められているって、稲荷さん、大丈夫なのだろうか。
「サツキ様、アースの言う『なつやすみ』? に、またお邪魔させていただきますわ」
「へ?」
「フフフ、今度はもう少し楽に来られるはずですし、もう少しお土産もお持ちしますわね」
「え?」
「では、失礼します」
「じゃあね!」
楽し気に去っていく美人エルフの背中を見送りつつ、夏休みにも来るのか、と思って苦笑いが浮かぶ。
今からエルフの村に戻っても、とんぼ返りになるんじゃなかろうか。
ふと、楽に来る、という言葉がひっかかり、首を傾げる。
私が思いつくのは、馬車の性能をあげることくらい。そういえば、ギャジー翁のところにも何度か行っていたようだし、魔道具として何か開発とかしたんだろうか。
――それこそ、キャンピングカーとか!
そうだったら、私も欲しいんだけど。こちらのお金だったら、腐るほどある。何せ、グルターレ商会が来た時くらいしか使い道がないのだ。
ギャジー翁たちはまだ会話の最中なので、声をかけるわけにもいかず、私を呼んでくれたハノエさんにお礼を言うために、彼女の家に向かうのであった。
活動報告を更新しました。
『山、買いました』2巻重版決定
https://mypage.syosetu.com/mypageblog/view/userid/695723/blogkey/3251302/
タイトルの通り、2巻重版決まりました。
ありがとうございます<(_ _)>
これからも頑張ります。





