第609話 辺境伯領の噂話を聞く
いつものごとくスーパーカブで村へやってきた私。
バイクのエンジン音に気付いて、子供たちがすぐに出迎えてくれた。皆が門のほうへと案内してくれると、そこにグルターレ商会の荷馬車がかたまって停まっていた。
すでに荷物が下ろされて、村人たちとの商売のやりとりも始まっているようだ。
子供たちと一緒に商品を見て歩いていると、馬車の御者台近くでレィティアさんとディアナさんが、レディウムスさんと和やかな雰囲気で話しているところに遭遇した。
「こんにちは」
「おお、サツキ様」
「どうも。無事に戻られたようで」
「はい。特に問題もなく済みまして、ホッとしております」
レィティアさんとディアナさんも、ニコニコしながら一緒に話を聞いている。
今回はどこまで行っていたのか聞いてみると、隣にあるというレミネン辺境伯領の領都まで行ってきたらしい。
レミネン辺境伯といえば、マグノリアさん一家のことが頭に浮かんで、あまり好印象はない。
「その辺境伯の領都っていうのは、どんな感じなんです?」
私の知る大きな街は最寄りのケイドンしかないので、どんなものなのか気にはなる。
「そうですねぇ。辺境伯領の中ほどにある街で、ケイドンの街に比べると倍以上の大きさはあるでしょうね」
その領都まで馬車で行くのに、間に2つほど村を経由したせいもあってか、1週間ほどかかったらしい。
そもそもなぜ辺境伯領へと向かったのかというと、ケイドンの街に行った時に商業ギルドに立ち寄ったらしく(そんなのがあるのを初めて知った)、領都に店を構えている知り合いの商人から、連絡が入っていたらしい。
「なんでも、最近立て続けに不幸があったとかで、街全体が少しばかり暗かったようです」
なんでも、去年の夏には現辺境伯の嫡男が病を得て寝たきりになったとか、この冬は矍鑠としていた先々代の奥方が、いきなりぽっくり亡くなったとか、他家に嫁いでいた娘が今頃になって出戻ってきたかと思ったら、事故にあってこちらも亡くなったとか。
……チラリと精霊たちに目を向けるけど、彼らは何も言わずにほよほよ浮かんでいるだけだ。
「まぁ、その嫡男の病気の件で、私ども商会に声がかかったんですけどね」
「それまた、なんで?」
「本当は息子たちの隊商への話だったようなんですが、今頃は南の小国家をあちこち回っているはずなのですよ。なので一番近いところにいた私どもが伺ったわけでして」
詳しい内容については、秘匿事項ということで話してはもらえなかったけど、その嫡男というのが、どうも去年王太子一行と一緒に来ていた子だったことが発覚。
思わず、うわぁ~、と声をあげそうになった。
キャッキャウフフと楽しそうな精霊たちを見ながら、こっちも絶対、精霊たちが何かしたんじゃないの? と私でも思った。
「とりあえず、我々の商品でなんとかできるのかわかりませんが……商売にはなりましたのでね」
二コリと笑うレディウムスさんに、私は「そうなんですねぇ」としか答えられなかった。





