第607話 元魔王羊の名付けと、ビャクヤ一家
元魔王羊はエイデンに叱られてから、ずっとミニサイズで過ごしている。おかげで猫ベッドに、マリンと二匹で共有だ。大きいサイズの時は、厩舎にでもいれておくか、とも思っていたんだけど、このサイズだったら家の中でも大丈夫そうだ。
二匹が一緒に寝ている時は、なかなか可愛い。
食事は何を食べるのかわからなかったので、まずはマカレナたちが届けてくれている牛乳をだしてあげたのだが、ペロリと一なめしただけで、プイッと顔を背けてしまった。
参ったなぁ、と思っていたところ、マリンが水の入った皿を差し出したら、素直に飲んだ。
その上、マリンの餌である魔物の生肉を食べた。
生まれたばかりだということ以上に、羊なのに草食じゃないことに、ちょっと、遠い目になったのは、仕方がないと思う。
いつまでも『元魔王羊』と呼ぶのもアレなので、角があるのでオスだろうというのと、『羊』と『執事』をかけて、セバスと呼ぶことにした。全然、執事らしいところはないけど。
いつもなら名前を付けたら従魔となるのだけれど、セバスはならなかった。
特別、私も従魔にしたいとは思ってはいなかったけれど、ならないとならないで、何故? とは思う。
エイデン曰く、セバスのほうが従うつもりがないからだろうとのこと。おかげで生意気だ、とまたエイデンが怒ったけれど、マリンには懐いていて、彼女の言うことなら聞くようなので、それでいいか、と思う。
何かしでかすたびに、マリンが長い尻尾をパシンパシンと床を叩いているだけで、ビビっていたし。
翌朝、洗濯物を干しているところに、ビャクヤ一家がやってきた。
その彼らの前にいるのは、日向ぼっこをしていたミニサイズのセバスとマリン。二匹並んで座っている姿は、ちょっと可愛い。
『こやつが、元魔王ですか』
クンクンとニオイを嗅いでいるビャクヤの背後から、興味津々の目で見ているのは三つ子たち。
「メェェ」
私には『無礼者め』と言ってそうに見えるセバスなんだけど、大きなホワイトウルフたちに囲まれているせいか、虚勢を張っているようにしか見えない。
マリンも自分の毛繕いに集中しているようで、ホワイトウルフたちのセバスの扱いには無頓着のようだ。
『弱そうね』
『弱いんじゃない?』
『俺なら一撃だな』
三つ子たちが物騒な話をしていたので、彼らの後ろにいたユキがペシペシペシと頭を叩いてる。
『見た目は普通の羊みたいですけど。少しばかり魔力がにじみ出ているかしら。ノワールの時ほどでもないから、気にはならないわね』
シロタエがじーっとセバスを見つめている。
そういえばノワールが生まれた時は駄々洩れ状態で、ビャクヤ一家がまともに敷地にいられなかったのを思い出す。
「それって、ノワールよりも弱いってこと?」
『いえいえ、たぶん、こやつのほうが魔力を抑え込むのが上手いのでしょう』
ビャクヤの言葉に、自分が褒められているのがわかるのか、ムフーっと鼻息を出して得意げな感じのセバス。
『偉ぶるな』
テシッとマリンの尻尾で叩かれるセバス。
……なんか嬉しそうに見えたのは、なぜだろうか。





