第600話 子供たちとさくらんぼ狩り
山の桜並木に、子供たちの楽しそうな声が響く。
「うわ、おいしい!」
「おおきいっ!」
「わたしのほうがおおきいよ!」
村の子供たちが、ストックバッグにどんどんさくらんぼを入れていく。
ログハウスの敷地の次に、山の中の桜並木のほうでさくらんぼがなり始めた。粒の大きさも敷地のさくらんぼに負けないくらいだ。
桜並木は山裾まで続いているので、当然、私一人では採り切れない。
なので、ガズゥ、テオ、マルの3人と、孤児院の年少組の子供たちに、さくらんぼ狩りをお願いしたのだ。お駄賃は、さくらんぼ食べ放題。
ちなみに年長組の子たちは、村のほうのお手伝いがあって来れなかった。
「気を付けてね」
「だいじょぶだよー」
私よりも小柄な子供たち。彼らの手に届くところにはないので、男の子たちは脚立を使って高いところになっているさくらんぼを採っては、下で待っている子たちに渡している。
「ん」
「ありがとう、マルにいちゃん」
木に登って高いところになっているさくらんぼを採っているテオ(9才)とマル(7才)。彼らがスルスルーっと木に登っていくのはさすがだ。
マルは自分より年下のアマとガーディに採ったさくらんぼを渡してあげている。
「ほら、こっちのもやる」
「ありがとう! ほら、ロー。食べてごらん」
「あうー」
テオがエリーに渡してあげると、エリーはここで一番年長のルルーに背負われたローにさくらんぼを差し出す。
「まうー」
ローは嬉しそうにさくらんぼを口にくわえて、涎をだらだら流しながら食べている。
――可愛いなぁ。
私も子供たちと一緒にさくらんぼを採っている。
粒が大きいせいもあって、ストックバッグ(Lサイズ)はすぐにいっぱいになるので、さっさと『収納』してしまう。すでに、10袋くらいになっている。
「サツキ様、こんなに採ってどうするの?」
ルルーがさくらんぼでいっぱいになったストックバッグを私に差し出しながら聞いてきた。
「生で食べてもいいけど、ジャムとかさくらんぼ酒とか作ろうかなーって」
「ジャム!」
「ジャム!」
私の声が聞こえた子供たちの目がキラキラしてる。
ジャムは村ではちょっとした贅沢品になるものだから、余計に嬉しいのかもしれない。
そういえば、菓子などの甘い物自体があまり多くないと、レディウムスさんが言っていたし、グルターレ商会の持ってくる商品の中の砂糖も、かなりお高い値段だった記憶がある。
あちらでは、種類によっては多少高いものもあるけれど、買うのに躊躇するほどのものではないので、バンバン買ってきてしまうけど。
「たくさん出来たら、孤児院に持っていくね」
「はいっ! 皆、がんばって集めるよっ!」
「はーいっ!」
桜並木の道を駆け下りていく子供たち。かなり気合が入ってる。
――いや、すでに十分集まってるんだけどね。
苦笑いしながらも、走っていく子供たちを見つめる私なのであった。
* * * * *
ザワザワザワ~
少し強めの風が桜並木を抜けていく。
「あ、さくらんぼ、おちてきた!」
「あっちにもおちてるっ!」
子供たちの賑やかな声を聞きながら、風の精霊たちがニコニコしながら飛び交っている。
『ほら、そっちのがおとせるぞ』
『それ~』
ザワザワザワ~
「やったー!」
「すごーい」
『すごいだろー』
『えへへへー』
子供たちには精霊の声は聞こえていないけれど、精霊たちがあちこち楽しそうに飛び交っていた。





