第598話 大地くんのGWが終わる
ゴールデンウィークはあっという間に過ぎてしまった。
「お世話になりました」
着替えが入っていると思われる大きめのスポーツバッグを持った大地くんが、ぺこりと頭を下げた。若干、ゲッソリした様子は、よっぽど魔道具作りに集中してたのだろう。そういえば、ちゃんと宿題は終わらせたんだろうか。
「いえいえ。私は何もしてないんで」
実際、村のほうにはレィティアさんたちを村に入れた初日だけしか行けていない。
何せ、養蜂箱がいっぱいになってると精霊たちに教えられて、慌てて蜜を集めたり、バラの花が咲き始めてたので、ジャムやドライフラワー用に花びらを集めたり、それ以外にもやることがいっぱいだったのだ。好天が続いていたので助かった。
その間、完全にレィティアさんたちも放置状態だったけど、村のほうからは何も言われていないので、大丈夫だったんだと思う。たぶん。
「むしろ、色々作ってもらえて、私の方が感謝です」
私が欲しいと言っていたドライヤー、アイロン、電動ミキサーの魔道具版を優先して作ってくれたのだ。
若干、サイズは大きいし、デザインは今一つではあっても、電気なしで使えるっていうのは助かる。そのうちモリーナあたりがブラッシュアップしてくれるに違いない。
「あれは、けっこう簡単に出来たんで……空飛ぶキックボードに手が付けられなかったのが残念なんですけどね」
「そ、そうなんだ」
悔しそうな様子に、これは夏休みにも来るのは確定だろうな、と思ってしまった。
「そういえばレィティアさんたちは?」
「んー、まだ村のほうにいるみたいです。母はオババさんと何か作ってるみたいで」
「なるほど……」
村のほうの迷惑になってなければいい。
ディアナさんのほうは子供たちと一緒に遊んだり、ピエランジェロ司祭のお手伝いをしてくれているらしい。
グルターレ商会の面々は彼女たちが村に入った翌日には、二人と彼女たち付きのメイドを置いて別の街に行ってしまったらしい。
「……ということは、彼らが村に戻ってくるまでは」
「す、すみません」
「ほんと、申し訳ない」
「い、いえ、村のほうで問題なければ、いいですよ」
何かあれば言ってくるだろうし、初日で村にも馴染んでいたから大丈夫だと思う。今泊っている場所は商会用に用意してあった宿舎だそうだ。
「(はぁ……色々買ってきておいてよかったですよ)」
「うん?」
「いえいえ。荷物は、ここに置いても大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ。むしろ、こんなにいいんですか」
「ご迷惑おかけしたのに、この程度じゃ少ないくらいですよ」
稲荷さんの眉は八の字になっている。
30キロのお米の袋が5袋と、ビールやワイン等の入った箱がいくつか。それに、マスクメロンの段ボールが山積み。そもそもマスクメロンなんて、自分だけのためになんて買わない。ケーキの飾りにのっててラッキーと思うくらいだ。
ログハウスの前に止まっている稲荷さんの軽トラの荷台は、荷物を下ろしきって、今は大地くんのマウンテンバイクだけ載っている。それ以外の持ってきたベッドなどはそのままギャジー翁の家に置きっぱなしらしい。
「また来ます!」
軽トラの助手席から手をふる大地くんに、私も手を振り返した。
今年は書籍化の機会をいただき、また多くの方々に読んでいただき、ありがとうございました<(_ _)>
来年は1月15日頃に2巻が発売予定です。お手元で楽しんでいただければ嬉しいです。
今後も地道に書き続けていけたらと思いますので、引き続きお付き合いいただければ幸いです。
皆さんも、よいお年をお過ごしください(^^)/





