第596話 獣人の村にて(4) 魔道具話
大地くんの部屋の確認を終えると、レィティアさんたちから連絡が来るまでということで、人をダメにするクッションが置いてあった部屋に案内された。
さすがに人数分はないのでクッションには座らず、横に置かれている背の高いテーブルに合わせた椅子に座る。エルフサイズのせいか、私の足だとつま先しか届かない。ちょっと子供になった気分になる。
ヴィッツさんがサッとお茶と煎餅を出してくれた。
煎餅はきっと稲荷さん作だろう。そしてお茶のほうはといえば、薄緑色のお茶。この前いただいた美味しいお茶とは別の物だ。薬草茶かなと思いながら口にする。
「……うん? 日本茶?」
「ええ。おわかりで」
にこりと笑うヴィッツさん。どうも大地くんがお土産で買ってきた物らしい。
「こんな爽やかなお茶は初めてです。エルフの里にもありません」
「里の薬草茶は、これに比べると少しえぐみがあるよね」
「そうだな。このお茶に慣れると、里の薬草茶が飲みづらくなるな」
煎餅をバリバリ食べるエルフたち。なんともシュールだ。
「そうだ。魔道具のほうはどうなってるんです?」
大地くんはそのために短いゴールデンウィークの期間に戻ってきたのだ。
「まだ、何も。アースが色々とリストを作ってきたようなのですが」
「あちらの道具を魔道具化できそうなのはないか、色々調べてはきたんです。すぐにでも出来そうだな、と思ったのはこれくらい」
そう言ってメモをしてきた紙を取り出してみせてくれた。
「えーと、何々、通信機に、カメラ?」
「スマホみたいに、会話の通信とカメラができるようなのができたらいいんだろうけど」
「まずは、別々にってこと」
「うん」
他にも、掃除機や浄水器、録音機、等々。できるのか? と思うような物もチラホラ。
「空飛ぶキックボードって」
「え、えへへ。あちらで映画で見て……こっちだったら出来そうかなって」
映画に影響された大地くん。その気持ちは、わかる。
「それができるんだったら、バイクとか車もできそうだよね」
「あ」
空飛ぶ車とかあったら、軽トラでガタガタ道を走るよりも楽になる。
それに通信機とカメラができて空も飛べたら、ドローンなんかも作れるんじゃないだろうか?
「なんで今まで作らなかったの?」
「単純に馬車があったからかなぁ」
「思考の停止ってヤツか」
「慣れって怖い」
「ねぇねぇ、こういうのは作れます?」
私は大地くんのリストにはなかった、ドライヤー、アイロン、電動ミキサーの魔道具版、をあげる。どれも代替するものはあったりするらしいのだが、魔道具となるとないらしい。
「さすがにゴールデンウィークで全部は作れないけど、設計図くらいはできそうかな」
ワクワクしている大地くんだけど、私はふと気になったことを口にした。
「学校の宿題とかは、大丈夫なの?」
「あ」
ピシリと固まる大地くん。
「宿題?」
「ええ、よく休みに入る時とかに、学校から課題を出されることがあるんで、大地くんの学校はそういうのはないのかな、と」
「……忘れてました」
バタンとテーブルに突っ伏す大地くんに、ギャジー翁もヴィッツさんも呆れ顔だ。
「まずは、その宿題とやらを終わらせてからだな」
「はい。すぐやります。さっさとやります」
大地くんが気合を入れて立ち上がった時、玄関のドアがドンドンと強く叩かれた。
活動報告更新しています。
『山、買いました』キャラデザ紹介(6)
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ご覧になってみてください (^^)/





