第594話 獣人の村にて(2) やりすぎ稲荷さん
ギャジー翁の住む家は、ドワーフや獣人たち総出で突貫工事で作ったわりには、かなり立派な建物になっている。これはギャジー翁本人も魔法を使って手伝ったそうで、私のログハウスよりも少しだけ大きな家になっているようだ。
家の中に入るのは初めてなので、ついついキョロキョロ見てしまうのは仕方がないと思う。つい、玄関から見える左手の大きな部屋に目がいってしまった。
なぜか、人をダメにするクッションが三つほど置かれていて、思わず固まる。色は全て濃いグリーン。
「ああ、あれはアースが持って来ましてね」
頬を染めて照れるヴィッツさん。よっぽど気に入ったってことなのだろうか。
いつの間に、と思ったけれど、そういえば軽トラに段ボールをいくつか載せていたのを思い出す。アレの中身はこれだったのか、と合点がいった。
――え、欲しいかも。
うちのリビングにアレを置いたら、少し窮屈になるかもしれないけれど、冬場、暖炉の前でアレに座っている自分を想像してしまった。
大地くんが戻ってくるまでの間、ヴィッツさんとの世間話は、主にモリーナのことだ。
「まったく、あの子には困ったものです。アビーがいなかったら、まともに生活できなかったでしょうね」
「あはは」
ある意味天才肌のモリーナ。集中すると寝食を忘れるタイプらしい。そこをアビーが、うまいことコントロールしてるらしい。
そのアビーとヴィッツさんはまたいとこの関係にあるそうだ。ちなみに、アビーのほうが年上なのだそうだ。
元々エルフ自体が見た目が似たような感じなので、親戚と言われれば、そうなのね、と思ってしまう。強いて言えば、ヴィッツさんはおっとり系で、アビーのほうがしっかり者という感じか(モジャモジャ頭のモリーナが特殊なだけなんだろう)。
そのおっとり系のヴィッツさんだけど、モリーナにはビシバシやってるらしいから、人は見た目ではないんだな、と思う。
「おはようございます。サツキ様」
「おはようございます」
ヴィッツと似たような色違いのチュニックを来たギャジー翁がやってきた。その後ろには大地くんがついてきている。
「お待たせしました。ご覧になりたいのは、アースの部屋ですよね」
「ええ。稲荷さんがどうしたのか気になって」
「あはは。その気持ちはわかりますよ」
若干、ギャジー翁の目が死んでいるように見えるのは気のせいだろうか。
「……驚かないでくださいね?」
「そんなに?」
ヴィッツさんにも念押しされたけれど、大地くんまでわざわざ言うあたり、ヤバそうなニオイがぷんぷんする。
「実は、ここ、元は小さな収納用の場所だったんですけどね」
私は大地くんの後をついていく。彼が案内してくれた場所は、この家の階段下に作られている収納用の場所。某ファンタジー映画で、魔法使いの少年が押し込められていた場所みたいだ。
そう言って、大地くんがゆっくりとドアを開く。
「え?」
ベッドに作業用のテーブルに椅子。箪笥や本棚らしき物も置かれている。置かれている物はいたってシンプル。普通の物である。
しかし問題は部屋のほう。
あきらかに、家のサイズに対して、この部屋の広さがおかしいし、部屋の明るさもおかしい。
「広いのは空間拡張だとしても、こんなに明るいのって」
「窓、窓があるんです、この部屋」
確かに大きな窓が2つある。2つもだ。
「……ここ、この家の真ん中になかった?」
「外、見えますよ」
大地くんに言われて、恐る恐る窓際によって、外の景色を確認してみれば。
「どこよ、ここ!」
片方は白銀の世界。もう片方は海辺の砂浜。
「何やってんのよ、稲荷さんっ!」
思わず叫んだ私は悪くないと思う。
活動報告更新しています。
『山、買いました』キャラデザ紹介(4)
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ご覧になってみてください (^^)/





