第591話 大地くんの高校での話
「やっぱり旨いな! さすが五月だ!」
……目の前で美味しそうにカレーを食べているのはエイデン。
なぜか、稲荷さんたちがやってきたのを察知してうちに飛んできたわけだ。
そんな彼の言葉に苦笑いしている稲荷さんと、黙々と食べる大地くん。
「ソウ、ヨカッタワー(棒読み)」
おかげで作り置きにするために大量に作ったはずのカレーが、ほとんど残ってない。人数分しか目玉焼きを作ってなかったから、急遽、ソーセージとともに焼くことに。
ちなみに、土鍋で炊いたご飯も早々になくなったので、万が一のために『収納』してたラップに包んであるご飯を出す羽目に。一応、炊き立てを『収納』してあったので、温かさはそのままだ。
カレー自体は普通の市販のルーなので、私としてはいたってなじみ深いモノで、正直そこまで感動するものじゃない。それよりも、ワイルドボアの塊肉が予想以上に柔らかくなっていて、こっちのほうに三人とも驚いていた。
「大地はいつまでいるんだ?」
エイデンが最後のひとさじを名残惜しそうに食べた後、まだ食べている大地くん(のカレー)を見ながら聞いてきた。
「……今日から5日」
「短いな」
「仕方ないでしょ。学校だもんね」
ゴールデンウィークなのを考えると、けっこう日数的にはギリギリなんじゃないかと思う。
会話の流れで学校の話を聞いてみた。
学校は一応共学らしく、全寮制なのだそうだ。自分は高校までは自宅から通ったので寮での生活っていうのには少しだけ興味がある。部屋は普通は二人部屋らしいのだが、たまたま同室の人がいなくて一人で気兼ねなく過ごせているらしい(そこに神様の思惑が絡んではいやしないか、と穿った見方をしてしまう私)。
学校の勉強は少し難しいけれど、なんとかついていけてる感じらしい。こっちの学校を卒業しているはずの大地くんだけど、やっぱり世界が違うと学ぶ内容もレベルも違うらしい。
高校でレベルが違うって、こっちの学校ってどんな勉強してるんだろうって、気になってしまった。
さすがに自分が今から入るなんてことはありえないけど、村の子たちのことを考えると、一度ネドリやピエランジェロ司祭あたりに聞いてみてもいいかもしれない。
「そういやぁ、友達ができたんだよな」
「まぁ」
食べ終えた稲荷さんはお茶を飲みながら言ってきた。そのお茶は、稲荷さんがどこかから取り出したヤツ。私の前にも置いてくれた。美味しい。
「友達っていっても、席の隣と前に座ってるヤツだけど」
「でも仲いいんだろ。夏休みにキャンプ場に来たいとか言われるくらいには」
「まぁ、ね」
照れ隠しなのか、顔をしかめて答える大地くん。
その友達が男の子なのか、女の子なのか聞いてみたいところだが、思春期(?)の彼には聞きづらかったので止めておいた。
部活は休みの日がとられるので入っていないらしい。長い休みにはこっちに戻って魔道具作りがしたいのだそうだ。
だったら、工学系(ロボット部とか)の部活とかはないのかと聞いてみたけれど、そういうのはないらしい。
食事を食べ終えると、稲荷さんは軽トラに乗ってあちらに戻り、大地くんはマウンテンバイクで村の方へと戻っていった。
「五月」
「何?」
テーブルの上の食器をまとめている私に、自分の皿を持っていたエイデンが声をかけてきた。
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