表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
異世界のGWと元魔王の誕生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

662/969

第583話 グルターレ商会 レディウムス

 スーパーカブでニコラを追いかける。しかし、一度も彼女に追いつくことなく(背中すら見えなかった)、村に着いてしまった。兎獣人、恐るべし。

 村の裏門のそばにスーパーカブを止めて村の中に入ってみると、村の表の出入り口の門周辺に人だかりが出来ている。

 相手がグルターレ商会だとわかっているということは、誰かが村の結界の中まで入っているということだ。私も会ったことがある人だということだろう。

 私に気付いた村人たちが、サーッと私の通らせるために道を開けてくれる。ニコラもその集団の中にいて、孤児院の女の子たちと仲良さそうに話している。

 どうも、どうもと頭を下げながら門までたどりついてみれば、ネドリと話しているエルフの姿が見えた。

 なんか見覚えがあるな、と思ったらカスティロスさんのお祖父さん……名前は……。


「サツキ様、ご無沙汰しております。 レディウムスでございます」


 ネドリとの会話を止めて、にこりと笑みを浮かべ深々と頭を下げる、レディウムスさん。


 ――こんなに腰の低い人だったっけ?


 最初の印象があまりよくなかったので、思わず顔が強張る。


「ど、どうも。お久しぶりです」


 挨拶をしながら周囲を見るけれど、そこにいるのはレディウムスさんだけで、他のグルターレ商会のメンバーの姿は見られない。馬車の姿もない。


「えーと、商会の方が入れないって話だったんで来たんですけど……」

「ああ、そうなのです。私しか村の中に入れなくて。馬車は門の外に停めてあります」

「なるほど……でも、つい先日もカスティロスさんがいらしてましたけど」

「ええ、ええ。そうですよね。実は今回は、商売というわけではなく……」


 困ったような顔で答えようとした時。


『レディウムス~、まだ~?』


 若い女性の暢気な声が門の向こう側から聞こえた。


「……はぁ」


 名前を呼ばれた本人は、額に片手を当てながら、心底参ったという感じで深~いため息をつく。なんだか、一気に老けたような感じになった気がする。


『レディウムス~?』


 今度は別の若い女性の少し不機嫌そうな声。前の女性よりも、もう少し若そうだ。

 それにしても、レディウムスさんを困らせる相手って誰だろう。なんか、それだけでちょっと怖い。


「サツキ様、申し訳ございません。えー、レイティア様とディアナ様を、村の中に入れてはいただけませんでしょうか」

「……うん?」


 名前を聞いてもピンとこないので、首をかしげる。


「あー、えーとアース様のお母様と姉君です」

「……アース、アース……ああ! 大地くん! って、え?」


 まさかの稲荷さんとこの奥さんと娘さんだった。 

 そして思い出す。 

 ゴールデンウィークは村にまた来ると言っていた大地くん。

 家に戻るのをめんどくさがっていた大地くん。


 ――そういや、あちらはもうすぐゴールデンウィークだったっけ。


 そして、もう一つ思い出したのは。


『母さんが、母さんが、家出しちゃうからっ!』


 大地くんに縋りついて叫んでいた、残念な稲荷さんの姿だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ