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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
新しい命にあふれる春

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<ガンズ>(1)

 魔の森を数頭のホワイトウルフたちが駆けていく。中でも少し大柄な一頭の背に、小柄なランドと、彼を抱え込むようにニコラがしがみついている。

 そんな彼らのペースに負けないくらいのスピードで追いかけるガンズたち。


「随分と森の中が静かだね」


 走りながら聞いてくるのは、まだまだ余裕のあるネーレ。


「拠点の壁にも凄い数の魔物が死んでたんだもの、街の方にもかなりの数の魔物が向かったんじゃない?」

「もう、それってスタンピードじゃん」

「大物はいなかった。そんな規模じゃないだろ」


 ネシアとネーレの会話に、拠点で見た魔物たちの死体の山を思い浮かべたガンズは淡々と答える。

 時々休憩を入れながら走ること3時間ほど。森の外れにたどりついた頃には、すでに空は青みがかってきている。

 ここから見えるケセラノの街は、まだかなり小さい。

 ケセラノの街は、魔の森が近いこともあり、日が落ちると同時に街の門が閉まる。

 できることなら、ホワイトウルフたちを街の近くまでは連れていければいいのだが、魔の森から魔物が溢れたときのために、城壁には衛兵が常時警備している。万が一にも衛兵に見つかったらホワイトウルフたちが狙われるかもしれない。


「ここからは、歩いて街に行く。降りろ」

「はい」

「は、はいっ」


 ニコラとランドはホワイトウルフの背から降りる。ランドの足元が覚束ない様子に、ネシアがランドをおんぶすることに。


「す、すみません」

「いいのよ、無理しないで」

「(ああ、ネシアが母親みたい!)」


 アレシュが目をキラキラさせながらネシアを見つめて小さく呟くのを、ガンズとネーレが生温い目で見つめる。

 大柄な狼獣人たちのペースに、兎獣人のニコラがついていけるわけもなく、それに気付いたガンズがペースを落とす。

 

 ――この調子じゃ、ケセラノの中には入れないか。


 城壁近くで野営することも視野にいれて街へ近づいていくと、あちこちで冒険者らしき集団があちこちで見かけるようになった。

 彼らの手にはいくつもの小型の魔物がぶら下がっている。


「やっぱ、こっちにも魔物が来たみたいだね」

「ああ」


 賑やかな様子に街は無事なのだろう。


「これだけ冒険者が外にいるんだ。門もまだ開いてそうだ」


 ガンズの言葉通り、門は埃まみれの冒険者たちで溢れていた。

 

「はい、次……ニコラじゃねぇか。お前、魔の森にいたのか。大丈夫だったか!」


 ニコラの顔見知りの門衛なのだろう。心配そうに声をかけてきた。


「テッドおじさん……なんとか、無事。ランドもいるよ」

「おお、ランドもか。もしかして、あんたらが助けてくれたのか。ありがとうよ」


 門衛がニカッと笑いながら身分証をチェックすると、街の中へと入れてくれた。


「さて、孤児院に行くか」

「あ、あの、その前に冒険者ギルド行っていいですか」


 ランドがネシアの背中から声をかける。


「……薬草採取の依頼を受けてて……」

「ああ、早く出さないと悪くなっちゃうもんね」

「は、はい」


 ネシアの言葉に、ランドはホッとした表情になった。


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