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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
新しい命にあふれる春

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第578話 ニコラとランド(1)

 ゆっくりと彼女たちのそばに近寄り、しゃがみこむ。


「こんにちは」

「……」


 優しく声をかけたつもりなのだが、二人は一点を見つめ大口を開けてピキーンッと固まってる。

 彼らの視線の先には、大きなホワイトウルフたちが集まっている。その中で一際大きなビャクヤが、こちらを見ている。特にビャクヤは某アニメ映画に出てくる山犬の親玉くらいにデカいから、見慣れない彼らからしたら、恐ろしく感じるかもしれない。


「あー、怪我とかはない?」

「は、はい」


 尋ねる声に、ハッとする兎獣人の子。おどおどしながら返事をしてくれた。

 どこだかわからない場所で、いきなり見知らぬ大人から声をかけられたのだ。その上、自分よりも強そうな男の子たちもいる。そうなるのも無理もないか。

 私は『収納』から紙コップを取り出して二人に持たせると、同じく『収納』から冷たい麦茶が入った大きなペットボトルを取り出した。

 はっさくのジャムの炭酸割りも考えたけれど、すぐに飲ませることを考えたら、こっちだろう。


「とりあえず、飲んで一息いれて」

「……」


 男の子が恐る恐る匂いをかいだ後、コクリと飲む。


「!?」


 一瞬、目を見開いたかと思ったら、勢いよくごくごくと飲み干してしまった。

 兎獣人の子はその様子に驚きながらも、同じように一口飲んで……すぐに一気飲みしてしまう。

 よっぽど喉が渇いてたんだろう。


「美味しかった?」


 ぶんぶんと頷く彼らの目は、キラキラと輝いている。

 そこまで? と思って笑みがこぼれる。私は、もう一杯ずつ、彼らのコップに注いであげていると。


「いいなぁ、俺も飲みたい」

「サツキ様、僕も」


 私の背後からテオとマルが声をかけてきた。


「あれ? 二人とも水筒持ってるよね」

「持ってるけど、麦茶じゃない」

「美味しいお水だけど」


 二人は前にプレゼントした水が減らない水筒を腰に下げていたけれど、麦茶が飲みたいようだ。


「……狼獣人?」


 紙コップを二人に渡していると、兎獣人の子が今気付いたかのように呟く。


「そうだよ。俺はガズゥ。きみ、名前は?」


 いつの間にか、テオとマルの後ろからガズゥも現われ、マークたちものぞきこんできた。


「あ、あたしはニコラ。ケセラノで冒険者をやってるわ」

「ぼ、ぼくはランド。ぼ、冒険者だ」


 男の子はなんとか気合負けしないようになのか、兎獣人のニコラの背後にいたのに、前に出てきて胸をはっている。

 なんか、可愛い。


「へぇ。凄いね。俺も冒険者登録したいんだけど……」

「え、そうだったの?」


 ガズゥの言葉に思わず声をあげる。


「父さんも冒険者だし、俺も同じようになりたいなぁって思ってて」

「あー、そうか。ネドリを見てたら、そうもなるか」


 ネドリの戦っている姿なんて見たことはないけれど、彼が元Sランクの冒険者だったのは知っているし、村人たちから尊敬されているのも見てきている。そりゃぁ、息子が憧れるのも無理はないか。 


「12歳になったら、登録に連れて行ってくれるって約束してるんです」

「えっ」


 ニコラが驚きの声をあげる。  

 

「どうかした?」

「あ、てっきり私と同い年くらいかと」

「えーと、ニコラはいくつ?」

「14歳です」


 うちの村の14歳だと、孤児院のケインとリンダ。同性でいえばリンダになるわけで、彼女と比べると、ちょっと小柄かもしれない。それは種族特性みたいなものなのだろうか。

 ……それとも、生活環境が厳しいのか。

 ランドは、そのニコラよりも小柄。こんな小さくて冒険者なんてやれるのか、非常に心配になってきた。


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