第575話 兎獣人と人族の子
北のドアに到着してみると、すでにムクだけがウッドフェンスを飛び越えていたようで、尻尾を盛大に振りながら待ち構えていた。
その彼の目の前には、小型の魔物が山になっている。
「すごいわね。待っている間に集めてくれたの?」
『まだまだあるよ?』
そう言っている間に、フォレストウルフ用のドアから、ホワイトウルフたちが続々と魔物をくわえて現れた。こんなに連れてきてたっけ? と思ったら、三つ子たちと行動を共にしていた子たちもいるらしい。
『皆、今、集めてる』
トントンと魔物を置いては、再び、ドアをくぐって外に出ていく。
どんだけ集まるのか心配に思いながら、私はドアのほうへ向かう。
「ムク、獣人って言ってたけど、種族的には」
『うーん、長い耳をしてたから、兎じゃないかなー」
――なんと、兎の獣人!
今まで会ったことのある獣人は、どちらかというと肉食獣系(狼とか、熊とか虎)だったので、草食獣系の獣人を予想してなかった。
「怪我はない?」
『今は二人とも気を失ってるっぽいよ』
三つ子たちのペースで走ったら、初めてだったら気を失うのもわかる気がする。
「よく落とさなかったわね」
『フフン、父さんに任されたんだもの。落とすわけないじゃん』
自慢げにいうムクの頭を撫でてから、私はドアに手をかけようとしたんだけど。
「五月様、俺が開けます」
マークが厳しい顔で私の前に出た。
「え、あ、はい。お願いします」
ゆっくりとドアを開けると、そこにはウノハナとシンジュ、そして兎獣人の女の子と、人族っぽい男の子が横たわっている。
――あ。普通に冒険者っぽいわ。
私の思い込みが強いせいか、兎獣人のイメージは、なぜかコスプレなバニーガール(エプロン付きの短めなスカート)。飾りのようなウサギの耳のカチューシャをつけてる感じ。
しかし、実際に見た兎獣人は、立派なふかふかの黒い耳に、冒険者の格好(ベージュのシャツに革のベストとパンツ)。こんな魔の森にいたのだから、当然か。
人族の男の子は、ガズゥたちと同い年くらいに見えるけど、村の孤児院の同い年の子たちと比べても少し大柄なので、もう少し年上かもしれない。
慌てて駆け寄ろうとした私をおさえて、マークが慎重に近寄る。
「二人とも、気を失ってるだけよね?」
『そうよ。ちょーっと、張り切っちゃったもんだから』
『シンジュったら、子供を乗せてるのに凄いスピードで走るんだもの。風魔法があってよかったわ』
てへっとおどけてみせるシンジュに、呆れたような声のウノハナ。
先程、ムクが自慢気に言ってたけど、本当に頑張ってたのはウノハナらしい。振り返ってムクのほうを見たら、すでにそこにはいなかった。
……逃げたらしい。
「確かに気を失ってるだけです。五月様、どうしますか」
「そうね……」
このままうちの敷地に入れていいものか、悩んでいると、精霊たちが飛んできた。
『こっちはおちついたっぽい~?』
『ちいさいのが、いっぱい』
「どこ行ってたのよ」
『どばーってやってきたの』
『どばーって』
『ねー!』
……意味がわからない。
しかし、彼らが何かしたからこそ、あの魔物の激突が止まったってことなんだろう。詳しい説明を求めても、彼らがちゃんと説明してくれるかわからないので、気を失っている子のほうへと視線を向ける。
『あ、父さんが来る』
不意にウノハナが声をあげた。





