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「……くそっ、ファーロンの野郎、下手くそがっ!」
「ボーン! 急げっ……ぐわっ!」
「ロディ!」
――こんなはずじゃなかったっ!
帝国出身の3人の冒険者たちは、魔の森の中を必死に逃げまどいながら、それぞれに同じことを思っていた。
3人の男たちは、冒険者ギルド経由ではなく、帝国の貴族から獣王国の魔の森特有の魔物、ゲレベロウス(熊の魔物)素材の依頼を直接受けていた。
このゲレベロウス、捨てるところがないと言われる魔物であった。
肉が美味いのは当然のこと、毛皮は強力な防具に、爪や牙は武器になり、また大きな魔石を持つ魔物でもあった。中でも、睾丸は精力剤の素材としても有名で高額で取引されるのだが、強すぎて普通の冒険者パーティでは討伐するのも厳しいといわれる魔物としても有名であった。
貴族が求めているのは、精力剤の素材。
報酬の他に、途中で狩った魔物やゲレベロウスの残りの素材は好きにしていい、という太っ腹具合に、冒険者たちはやる気満々だった。
この依頼には、彼ら以外にも2つほどのパーティが参加していた。3パーティのレベルは同じBランク。それほど力の差はなかった。
ゲレベロウスの生息区域までは、大型の魔物といっても、フォレストボアやバイトフォックス、時折、はぐれオークなどがいるくらいで、かなり順調に進んでいた。
しかし、肝心のゲレベロウスとなると、そう簡単にはいかなかった。
最終的に3つのパーティで討伐できたのは2頭。それでもかなり苦戦したのは、彼らの想定以上にゲレベロウスが強かったことだ。
最後の1頭を討伐したら帝国に戻ろうと話が決まり、森の中を探索していた時、それは起こった。
「ファーロン、何やってんだっ!」
「えっ?」
ファーロンと呼ばれた男は、3人とは別のパーティのメンバーだった。
Bランクのパーティの中では一番ランクの低いDランクで、ほぼ荷物持ちのような位置にいた。
ファーロンは気が緩んでいたのか、彼が手にしていたのは足元に生えていた見かけは松茸のようなキノコだ。
そして怒鳴ったのは同じパーティメンバーの中の熊獣人の男。人族よりもニオイに敏感な彼が、青ざめた顔になっている。
「何だって言うんだ」
「ばかやろう……そいつは、別名クマアツメって呼ばれるアカニオイダケだ」
「ゲッ!?」
「クマって、お前だって熊じゃん」
「冗談言ってる場合じゃねぇ! 熊は熊でも、魔物の熊が寄って来るんだよ」
「近くにゲレベロウスが寄ってくれるんだったら、一石二鳥じゃねぇか」
「そんな簡単な話じゃねぇ! さっさとそいつをっ」
熊獣人がファーロンに始末の仕方を教えようとした時。
ウオォォォォ
ゲレベロウスの咆哮が聞こえた。
ウオォォォォ!
ウオォォォォ!
ウオォォォォ!
それが1つではない。いくつもの咆哮があちこちから聞こえだした。音程の差はあれど、かなり興奮している咆哮に、冒険者たちは慌てだす。中でも、どうしようもなかったのはファーロンで。
「や、やばいっ!」
彼としては手にしていたキノコを思い切り投げ飛ばしたつもりだったが、3人の近くにポトリと落ちると同時に、シューッという音と共に胞子が飛散してしまった。
彼らの足にはべっとりとアカニオイダケのニオイがべったりと着いてしまう。
「げぇっ!?」
「ヤバい、逃げろっ」
「お前ら、こっちにくんなっ」
「ちょ、待ってくださいっ」
2つのパーティは帝国側の山の方へと逃げていく。
アカニオイダケのニオイを付けられてしまった3人はケイドンの街の方へ。
そして肝心のファーロン。
あまりにも焦りすぎて、自分のパーティとは別方向……五月の山の方へと駆け出していた。
冒険者のセリフを修正しました。<(_ _)>
「……くそっ、ファーロンの野郎、中途半端なことしやがって」
↓
「……くそっ、ファーロンの野郎、下手くそがっ!」





