第571話 炭酸水をとりにいく
水の精霊の『じーさん』が頑張ったらしい湧き水。『ぷくぷく』と言うと、私の頭に浮かんだのは炭酸水。
炭酸水というと、頭に浮かぶのはソーダ割り。自家製の梅酒のソーダ割りとか、ブルーベリーソーダとかも美味しそう。
――そういえば、村人たちとの飲み会の時に、お酒を割る炭酸水があったらいいのにって、呟いてたわ。
もしかして、それを聞きつけたのだろうか。
どちらにしても、自然の炭酸水が手に入るのだったら、ありがたい。
「その炭酸水って、どこ?」
『ぷくぷくはね~、あっち!』
『あっち!』
『あーっち!』
水の精霊たちが山の上のほうを指さしたかと思ったら、すぐさま飛んで行ってしまった。
「お、おいてかないでっ!」
慌てて草刈り機を『収納』して、精霊たちの後を追いかける。勾配が所々急なところがあって、久々に登山って感じ。大荷物がなくてよかった。
20分近く登ってきて、さすがにしんどくなった私は立ち止まって肩で息をする。
――ど、どこまで行くのっ。
上のほうに目を向けるけど、水が湧きそうな場所なんて見当たらない。
――じーさん、どうせならもっと低いところにして欲しかった!
『ここ! ここ!』
精霊たちの声が、もう少し上のほうで聞こえてくる。
ゆっくりと足を進めていると。
「サツキ様、どうしたんですか」
いつの間にかマークが追いかけてきていた。その後に、ホワイトウルフが2匹。残りは、そのまま拠点にいてくれているのだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ……なんか、上に湧き水があるって」
「湧き水? え、誰が」
「あ、あー」
マークには精霊が見えない。これは、どう説明すべきか、と悩んでいると。
『さつき、さつき! はやく、はやく!』
水の精霊たちが戻ってきた。
「あ、うん」
「え、サツキ様!?」
とりあえず、マークたちに説明するよりも、実際の場所を見た方が早そうだ。
ひーこら言いながら、なんとか斜面を登ったところで、大きな岩がゴロゴロしているところに出た。
『ここだよー』
『ここ、ここ!』
「いや、ここって言われても」
大きな岩がいくつも積み重なっていて、その上のほうで精霊たちが飛び交っているんだけど、さすがに運動神経は平均並みな私では登れそうもない。ボルダリングでも出来たらいいんだろうけど、絶対無理。
「はぁ、どうしたんですか」
再び追いついたマークが、呆れたような声で聞いてくる。
――マークだったら、あの岩の上のほうも確認できるかもしれない。
「ねぇ、マーク。このボトルを渡すからさ、上に湧き水が出ていないか見てきてくれない? 出ていたら、これに詰めてきて」
「あんなところに、水ですか?」
ガズゥがいれば彼に頼むところなんだけど、まだ戻ってきていないので、側にいるマークに頼むしかない。
頭にはてなマークを浮かべていそうなマークだったけれど、なんとかボトル(プラスチック製の透明なボトル)を受け取ると、どんどん岩を登っていく。
「……ありましたー!」
マークの驚いたような声が聞こえた。





