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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
山での生活、冬ごもりに備えて

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第60話 何かがいる!

 落ち着いて傷のチェックをしている間、風呂桶の水は、もう一匹にジャバジャバ飲まれてしまった。


「ちょっと、もう、この子にと思って持ってきたのに~」


 倒れてた子の方には、本当に傷はなかった。(私にとっての)万能薬の出番はなかったようだ。

 ほぼ空っぽになってしまっていた風呂桶。もう一度、水入れてくるか、と思ったら、2匹は耳をピピッと立ち上がらせたかと思ったら、いきなり駆けだした。


「え、ちょ、ちょっと、畑はやめて!」


 今は何も植えていないけれど、一応、いつでも植えられるように、土は掘り起こしてある状態なのだ。まぁ、その上を走っても、足跡がつくだけだけど。


「うわ、絶対、あの子たち、言葉わかってるよね」


 うまい具合に迂回して、彼らは人工池へと向かっていく。


「あー、そっちの水の方がいいのか」


 風呂桶は1つしかないから、二匹で頭を突っ込んでは飲めなかっただろうからね。

 がふがふと勢いよく飲んでいる姿に、どっちが気を失ってた方なのかもわからなくなった。


「薬必要なくてよかったわ」


 ホッとしたその時。山の上の斜面のあたりがざわついたかと思ったら。


 ギャウギャッ

 ガルルルル

 ガウッ


 この山に来て以来、聞いたことがない、何かが争うような音が響いた。


「え、え、何、何が起こってるの」


 私は慌てて、犬たちに駆け寄ると、ぎゅっと抱きしめ、山の方へと目を向ける。しかし、木々の陰になって、何も見えない。でも、かなり激しい戦いなのか、ガサガサという音と共に、鳥たちが木々から飛び立っていく。

 そんな不安な私をよそに、2匹は私の顔を、ベロンベロンっと舐めまくる。

 なんなの、この子たちの落ち着きは。


 ……そして、臭い。


 生き物だから仕方がないけど。



 そうこうしているうちに、山の方の騒ぎが落ち着いた。

 もしかして、稲荷さんが言ってた魔物とか、そういうのが出たんだろうか。

 今まで、稲荷さんからの言葉でしか聞いていなかったから、気にはしながらも、実感まではわいていなかった。


 ガサガサッ


 今度は湧き水側のウッドフェンスの方から、何かが移動してきている音が聞こえた。


 ――ヤ、ヤバい。逃げないと。


 私は立ち上がろうとしたのだけれど、私の両脇にいた犬たちが、嬉しそうにワンワンッと吠えながら、湧き水側の出入り口の方へ走っていく。


「あ、危ないよっ」


 そんな私の声が届くわけもなく、犬たちは出入り口から出て行って……戻ってきた。


「わっふわっふ」

「わんっ」

「え、え、ええ?」


 私の足元を元気に回ったかと思ったら、今度はジーンズの裾を噛んで、私を引っ張ろうとする。


「外に行けっていうの?」


 なんか物騒なのがいそうなのに。

 でも、この子たちが無意味に、こんなことをしないだろう、というのは、直観とでもいうのだろうか、そう感じた。


「何、何なのよもぉ~」


 じりじりと出入り口の方へと向かい、ウッドフェンスの切れたところから、道の先にいるモノを見て、固まった。


 ――デカくて白い犬。それが2匹。


 そして、1匹は……大きくて真っ黒な蛇をくわえてお座りをしていた。

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