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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
新しい命にあふれる春

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第567話 子供たちのお手伝い

 精霊たちがご機嫌に飛び回っているのは、ログハウスの敷地の上空。中でも土の精霊がご機嫌だ。 春の暖かな陽気に浮かれているようだ。青空に黄色い光が妙に映える。


「サツキ様、植え終わりました!」


 顔と手、足元を泥だらけにして、ニカッと笑うのは孤児院のルルー。お互いの泥まみれな姿に笑い合っているのは、同じく孤児院のエリーとエフィム。

 今日はこの三人に、うちの敷地で田植えをお願いしたのだ(私も最初だけはやり方を教えてはいる)。

 その間、私は東屋のテーブルに、準備しておいたおにぎりや、唐揚げや味噌汁を並べていた。三人と私の今日のお昼だ。


「おお~、綺麗に植えられたね!」


 半分は畑にしているので、水田はそれほど広くはない。

 本当は私だったら『ヒロゲルクン』で稲の苗まで植えた状態にすることはできるんだけど、せっかくなら子供たちに田植えの仕方を覚えてもらって、村用の水田のほうもお願いしようかと思っていたのだ。


「じゃあ、あそこの池で泥を落としておいで。お昼ご飯、用意してあるから」

「はーい!」


 元気に水田から飛び出していく子供たちを見てから、私は飲み物を準備する。子供たちには、あちらで買ってきてあったレモン味の炭酸ジュース。私は冷たい緑茶だ。

 

「はい、これで拭いて」

「ありがとうございます」


 戻ってきた子たちそれぞれにフェイスタオルを渡す。ちゃんと石畳の上を走ってきたようで、足元はびしゃびしゃだけど泥はねはしていないようだ。

 子供たちが美味しそうにおにぎりを頬張っている姿を見て、ほっこりする。

 

「それで、次は何をすればいいですか?」


 ご飯粒を頬につけたまま聞いてきたのは、エフィムくん。まだまだ元気いっぱいのようで、ヤル気に満ちた眼差しで私を見てくる。


「うーん、そうだなぁ」


 山裾の水田の準備はまだ出来ていないので、そちらの田植えはまだ無理。


「あ、そうだ。まだ種籾が残ってたはずだから、空いているトレーに土を補充してから種を植えてくれるかな」


 事前に私が用意しておいた稲の苗。稲の苗用のトレー10枚分を用意してあったけれど、うちの水田で実際に使ったのは1枚半。


「それが終わったら、一緒に温室に行こうか」

「温室ですか?」

「そう。そろそろ苺がなってると思うんだよねぇ」


 つい先日、様子を見に行ったときに白っぽい実がいくつかあったのだ。温室のおかげなのか、精霊たちのおかげなのか。


「イチゴ?」

「イチゴってなんですか?」

「あ、食べたことなかったっけか」


 そういえば、去年ルルーたち孤児院の子たちが来た頃には苺はもう終わってたし、孤児院で振舞ったクリスマスケーキには苺はなかった(買っておいたケーキは、私が美味しくいただいてしまっている)。


「赤い実の果物なんだけど、甘酸っぱいのよ。それじゃ、種を植えたら後で一緒に行こう」

「はーい!」


 ――三時のおやつは苺に決定だな。


 今年最初の苺の実だけに、私も今からワクワクしてきたのだった。


          *   *   *   *   *

 

『なぁなぁ、きいたか』

『きいた、きいた』

『いちごって、あの、あかいのだろ?』

『そうそう。もう、けっこうあかかったよね』

『まだちいさいのもあるぞ』

『よし、みんなであかくしにいこう』

『おー!』


 温室に着いた五月たちが、嬉しい悲鳴をあげるまで、あと少し。

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