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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
新しい命にあふれる春

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第561話 ローのお守り袋

 大地くんたちの魚釣りは、そこそこ成功だったらしい。

 釣れた魚は見た目はカツオみたいな魚で、でも中身は白身。塩焼きにしたら美味しかったと言っていたが、川べりでホワイトウルフたちと一緒に食べてしまったらしい。

 今度は、私も一緒に釣りに行ってみようか、と、ちょっとだけ思っている。


 さて、今私はお守り袋を手に持って寺子屋へと向かっている。このお守り袋の中身は、『精霊王の涙』が入っているのだ。


 ローから渡された『精霊王の涙』と言われる精霊石。

 綺麗な楕円形をしていて、もう少しサイズが小さければ指輪にでもしたいくらいだけれど、実際はアーモンド大くらいあるので、ちょっと大きすぎる。

 ローは私に渡して満足したようだったけれど、貰った私の方が困るというか。何せ、タブレットで『鑑定』した結果が……。


+++++


 ▷土の精霊王の涙 


   土の精霊王の愛し子のために作られた精霊石。

   愛し子以外が持っても効力はない。

   備考 :土の精霊王の加護(愛し子の住む土地の植物はよく育つ)


+++++


 これって、ローは土の精霊王の愛し子ってことだろう。

 私が持っていても意味がないというのなら、ローが持っているのが一番だ。

 しかし、精霊石だとわかってしまうとローは素直に受け取ってくれないような気がしたので、チクチクとお守り袋を縫った。

 一応、精霊石が傷つかないように、ホワイトウルフの毛で包んで、黄色いフェルトのお守り袋に入れてある。それだけだと味気なかったので、緑のフェルトで『R』の文字を縫い付けた。こちらの文字とは違うので、ただの模様と思われるかもしれない。

 長めの紐を通したので、これなら首から下げられるだろう。


 寺子屋について、窓からちらっと教室の様子をのぞくと、皆、黙々と紙に何やら書いている。一生懸命な様子に、思わず笑みが零れる。


 ――そろそろストックしている紙や鉛筆がなくなってきているかも。忘れずに買い物しなくちゃ。


 突然、ガタガタと何かが倒れる音がした。教室の後ろのほうで、ローがガーディと一緒に積み木をやっていたようだ。

 あれもホームセンターで買ってきたものだ。そんなに高い物ではなかったけれど、ドワーフたちには珍しかったらしい。特に形でいえば円柱や橋のような形状のタイプだったり、色がついているのが興味深かったらしい。

 中でも木工の得意なエトムントさんがすぐに同じような物を作って、エルフたちが買い取っていったのは、この前のことだ。


「あー!」

「あーらら。こわしちゃった」


 静かな教室で、ローとガーディの声が響く中、私はゆっくりとドアを開けて、教室の中に入る。私の存在に気付いたピエランジェロ司祭が目を見開いたけれど、小さく頭だけ下げたので、私もぺこりと頭を下げる。


「あー!」

「(しーっ)」


 ローとガーディも私に気付いたので、人差し指を口元に立てるとローとガーディも真似をする。ちょっと可愛くて、身悶えしそうになった。

 精霊たち(特に土の精霊たち)がローの周りを飛び交っているのだけれど、ローは見えていないのか完全に無視。私のほうへ向かってきたので、私はさっそくお守り袋を取り出して、ローの首にかけてあげた。


「(ローにプレゼント。大事にしてね)」

「うー?」


 うちの村はただでさえ精霊たちがたくさんいるので、ローのお守りの効果の意味があるかわからないけれど、彼が大きくなった時、いつか役にたつ日がくるかもしれない。

 不思議そうな顔をしながら黄色いお守り袋を手にしていたけれど、最後にはニカッと笑ってくれた。


        *   *   *   *   *


『あれまぁ』

『せいじょのかごまでつけちゃって』

『まぁ、いいんじゃない? ひとのこはしにやすいから』

『このむらにいるかぎり、びょうきくらいじゃしにはしないだろうがね』

『そういやぁ、そろそろじゃねぇか?』

『あ、きこえる、きこえる!』

『あたらしいいのちがうまれようとしてるぞ!』

『じゅうじんのこだ!』

『みんな、いくぞー!』


 寺子屋の中で飛び交っていた精霊たちは、いっせいに飛び出していった。


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