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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
新しい命にあふれる春

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第559話 梅と米作りと、精霊石

 少し酔い始めている私の頬を、心地よい風が撫でていく。

 さすがにウォッカは飲んでいないけど、私の手にあるのは去年作った梅酒のソーダ割り。大きな瓶に作ってあったものだけれど、そろそろ底が見えている。


 ――今年はたくさん梅が生ってくれるといいんだけど。


 ログハウスの敷地の梅だけでも、梅酒や梅干し、梅ジュースは作れるけど、あくまで私一人で消費する分くらい。梅ジュースなんて、子供たちにも飲ませてあげたりしたので、早い段階で無くなった。

 しかし、今年は立ち枯れの拠点近くの山裾の梅のほうでも花がたくさん咲いていたので、梅の実がたくさん生るのを期待している。


 ――生ったら、村人総出で収穫かも。


 それに、今年は田んぼは必須だ。

 主に子供たちが美味しそうにおにぎりを食べている姿を見ると、もっと食べさせたくなるし、そうなると、うちの備蓄の米なんてあっという間になくなるだろう。

 私のタブレットでパパッと田んぼは出来るだろうけれど、メンテナンスとなると、そうもいかないだろう。

 村人たちの手を借りるのが一番だろうけれど、ザックスくんや孤児院の子供たちにお願いしてもいいかもしれない。ギブアンドテイクってヤツだ。

 そういえば、水田にカモのような水鳥を使って雑草とか虫の駆除とかをやっているのをテレビで見たような記憶がある。こちらにも似たような鳥はいるんだろうか。

 鶏に似たワイルドコッコなるものもいるくらいだ。探せばいてもおかしくはない……はず?

 もしいるのなら、少しは作業が楽になるはずだし、鳥肉も手に入って一石二鳥になるんじゃなかろうか。


「ねぇねぇ、サツキさま」


 米のことを考えてニヤついている私のところに、孤児院で一番下のローの手をひいて、ガーディ(下から二番目)が私の元にやってきた。

 出会ったばかりの頃は、彼女の背中に背負われていたローだけど、今はよちよちながらも歩いている。肉付きもよくなって、普通の赤ん坊よりも……太ってきてる気がする(大丈夫だろうか)。

 そのローの口の周りには、黄色いスープがついていたので、ハンドタオルで拭いてあげる。


「どうした?」

「あのね、ローがね、サツキ様にって」

「あー」


 小さな手の中から現れたのは、綺麗な黄色い透明な石。シトリンやトパーズのような宝石みたいだ。大きさはアーモンドの実くらい。


「え、どこで拾ったの?」

「わかんない。きがついたらローがもってたの」

「あー!」


 驚いている私のほうへと、ローが石ののった手を差し出してくるので、私はそのまま受け取ってしまった。


「ふんっ」


 なぜか満足げなローは、さっさとガーディを連れて、他の子たちのほうへと戻っていってしまった。


「……なんだろ、これ」


 呆然としている私の横から、エイデンが顔を覗かせて私の手元を見る。


「……ほお。これは土の精霊石ではないか」

「何、それ」

「土の魔力を多く含んだ石だ。魔物の魔石とは違って、魔力の純度が桁違いだ。そういえば、精霊石の大きさによっては『精霊王の涙』とも言われていたな」


 なんか、名前からしてヤバそうな石。魔石とは別モノなのだろう。ただの宝石と考えてはいけない気がする。あとで『鑑定』しなくては。


「……はっ!」


 エイデンの『精霊王』という言葉に慌てて周囲を見る。


「いつの間に……久しぶりに見たわ」


 少し離れたところでゲインズさんとギャジー翁の隣で土の精霊王が楽し気に立っているのが見えた。彼の姿を見たのはゲインズさんがドワーフの国から引っ越してきた時以来だ。


「ふむ。そういえば、アレはしばらく五月の山の北側におったな」

「はい!?」


 ――土の精霊王、山で何してたの!?


 凄く不安しか感じない。


「はぁ……」


 近々、確認しに行かないとダメかもしれない、と思ったら、深いため息がでた。


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