第547話 ヨシヒトたちの新しい家
ぶもぉぉぉ~
ブモォォォ~
ただいま牧場用の敷地を作るべく、『伐採』をしているところなんだけれど。
ぶもももぉぉ~
ブモモォォ~
うちの雄牛と、ヨシヒトさんが連れてきたソゴワの雄牛が、柵越しに威嚇しあっているのだ。
身体の大きさはあきらかにうちの雄牛のほうが倍近くデカいんだけど、ソゴワの雄牛も負けていない。優しそうな見た目に反して気が強いらしい。
「……一緒は無理かなぁ」
「そ、そうですね」
ヨシヒトさんたちは、うちの雄牛のデカさに腰が引けている。
一方の雌牛たちはというと、のんびり草を食んでいる。ぶもぶも騒がないだけマシだろう。
しかし、このままでは激突しかねないので、さっさとソゴワ用の放牧地を用意しないとダメだろう。
「そうだ。ヨシヒトさんたちの家のことなんですけど、村のほうで用意します? それとも、ゲハさんやマカレナたち同様、牧場のそばに用意しますか?」
「わたしらは、今までもソゴワたちと共に生活しておりましたからぁ、できれば牧場のそばがぁ、ありがたいんですがぁ」
「わかりました」
マカレナの家もゲハさんの家も、私が建てたログハウスだ。ただ、ヨシヒトさんたちのような大家族には向いていない。
「となると、大きな一軒家のほうがいいのかな」
「あ、できればぁ、弟のとことは別でお願いしたいんだがぁ」
ヨシヒトさん一家と妹さんで1軒、弟さん家族で1軒が望ましいらしい。
ちなみにヨシヒトさん、30代だと思ってたら、まだ28歳だった。私よりも若かった。
お子さんが大きいから(13歳と12歳の男の子)勘違いしてしまった。ちなみに妹さんは16歳。なんだったらヨシヒトさんの娘といってもとおるくらいだ。
「うーん、となると」
私はタブレットを取り出して『タテルクン』をたちあげる。
確かマカレナたちに建ててあげたのは『ログハウス 風呂・トイレ付き』1500KPで建てられるヤツだ。1階建てのタイプだ。
しかし、ヨシヒトさんたちのような家族用には向いていない。
「だったら、これかなぁ」
私が選んだのは『ログハウス(大) 2階建て 風呂・トイレ付き』3500KP。私のログハウスよりも大きいけれど、暖炉のないタイプだ。
「2軒並んで建てるのがいいだろうから、まずは建てる場所を確保しないとね」
建てるのであれば村へ向かう道沿いに2軒並べて建てるのがいいだろう。道を挟んで向こう側に放牧地が無難か。
――失敗しても、『ヒロゲルクン』で置き換えればいいしね。
私は素材集めも兼ねて、どんどん『伐採』していく。切り株はさくっと『収納』。一気に『整地』して、いざ、ぽちっとな、ぽちっとな。
ドシンッという地響きとともに、2軒のログハウスが現れた。
「よしっ!」
やり切った感のある私。勢いよくヨシヒトさんたちの方へ振り向いたら、その場にいた皆が固まっていた。
――はっ! やり過ぎた!?
私は頭に手をやりながら、苦笑いを浮かべるのであった。
* * * * *
「はぁ、やっぱり『神に愛されし者』っちゅうのは、違いますなぁ」
目の前で放牧地を切り開いている五月を見て、呆然とつぶやくヨシヒト。
「ですなぁ。私も見慣れたと思ってましたが、こうポンポン建物を建てたりしてるお姿を見るのは初めてで」
「そうですかぁ……あっ、あの、この家や土地の代金は、どうしたらぁ」
立派な建物を2軒に、広い放牧地まで借り受けるのだ。
金額を考えたヨシヒトは真っ青になる。
「ああ、でしたら大丈夫ですよ……サツキ様からは、お金は求められません」
「ええっ!」
「その代わり、美味しい牛乳やチーズ、バターを届けて下さい。わしらも週に何度か牛乳を届けているんですよ。それに、牧場周辺の草刈りなどですかね。さすがにサツキ様お一人では山全体を見るのは難しいようですから」
「……そんなんでいいんですか?」
木々を『伐採』している五月と、その後をついて回っている子供らのほうへと目を向けるヨシヒトたち。
「ええ。いいらしいです」
「……変わったお方ですなぁ」
呆れた声をあげるヨシヒトであったが、心の中では深く感謝するのであった。
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