表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
新しい命にあふれる春

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

606/976

第534話 桜の苗木を、皆で植える

 私は、孤児院の子供たちと一緒に、桜の苗木を植えることにした。

 さっさと終わらせたいのなら、 『ヒロゲルクン』のメニュー、『植樹』を使えば一発だ。

 でも、せっかくなら苗木づくりを手伝ってくれた子たちにも植えてもらったほうが、桜が咲いたときの感慨もひとしおだと思ったのだ。

 しかし、温室に一晩置いただけなのに、どれも同じくらい成長(私の腿くらいの高さ)していたのには唖然となった。


「さて、桜の苗を植えるわよー」

「おー!」

「おー!

『オー!』


 張り切る精霊の声が聞こえたような気がしたけれど、そこはスルー。

 なぜか孤児院の子供たちだけではなく、獣人やドワーフたちも張り切っている。去年の花見を覚えているからだろうか。

 ちなみにモリーナとアビーはいない。もうすぐ魔道具職人の師匠であるギャジー翁がやってくると連絡があったものだから、大慌てで何かやっているらしい。

 元あった桜の木の跡は、道沿いにそのまま残っている。私はそこを目安に1本1本苗木を置いていく。


「よーし、土を掘り起こせ」

「この黒いのはどうしますか」

「黒ポッドは取っといて」

「へい」


 力仕事は大人たちがやってくれるので、大きな子は大人たちの手伝いを、小さな子たちは如雨露に水をいれて撒いて回っている。

 そんな小さい子たちの後を水の精霊たちがついていってる姿は微笑ましい。


「あれ~、みずがへらな~い」

「やだー、あふれてきたー」

「きゃー」


 色んな声が聞こえてきたが、あえてスルー。


 ――いいかげん学べ、精霊たちよ。

 そう心に思いつつ、私は桜並木の方へと意識を向ける。

 道の半分くらいまで苗木を置いたところで、村人たちがどこまできているか様子を確認する。ここまでくるのは、まだ時間がかかりそうだ。


「よし」


 私は『収納』からスーパーカブを取り出すと、それにまたがり、エンジンをかける。

 エンジン音に反応したのか、エイデンの城のある山のほうからホワイトウルフたちが現れた。


『どこかいくの?』


 ホワイトウルフの集団の中にいたのは、三つ子の中でものんびり屋のシンジュだった。

 さすがビャクヤとシロタエの子。他のホワイトウルフよりも二回りくらい大きくて、まるで親子みたいだ。

 ドッドッドッというエンジン音を恐れないホワイトウルフたちは、尻尾を振りながら私を見上げている。


「ちょっと歩くのには距離があるから、出しただけよ。そんなに遠くにはいかないわ」

『そうなの?』

「ええ。ウノハナとムクはどうしたの」

『ウノハナとムクはー、あっちのやまで、わたしたちのことさがしてるー』


 あっち、と言って鼻先を向けたのは、ログハウスのある山のほうだ。


『いまは、おにごっこのさいちゅうなのー』

「え、いいの、こんなところにいて」

『だいじょうぶなのー』


 ウオウオッ


 一匹のホワイトウルフが声をあげる。


『あー、だいじょうぶじゃなくなったー。じゃあ、またねー』


 そう言ったとたん、シンジュ率いるホワイトウルフたちは獣王国の方へ向かって走っていく。

 

 ――あの子たちのおにごっこの範囲ってどこまでなんだろうな。


 遠い目になりながらも、私はスーパーカブで桜並木の最終地点、獣王国の森の近くまで向かうのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ