表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
新しい命にあふれる春

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

605/969

第533話 桜の苗木、再び

 帝国の瘴気の跡地は、今では完全に私の土地になっている。

 ただ、場所が獣王国の土地よりも遠すぎるので、手入れに行くのも大変だし、何かに使う予定もないので放置状態だ。

 そして桜の木はそのまま残してある。

 イグノス様曰く、あの土地自体が、『瘴気』を溜めやすい場所だったのだそうだ。

 ユグドラシルがあれば十分なのでは? と思ったけれど、ユグドラシル周辺だけに『瘴気』がなくなるだけで、ユグドラシルの影響から離れた場所で発生したり、他の場所に流れていってそこが溜まり場になる可能性があるのだとか。

 偶々、ちょうど『瘴気』が発生しやすい場所を桜の木で囲むことができていたそうで、結果オーライだった。

 しかし、そうなると今年の花見をどうしようか、となるわけだ。


「お手伝いありがとうね」


 今私は孤児院の女の子たちと一緒に、温室で桜の枝の挿し木を作りまくっている。

 去年の桜が咲き終わった、夏の初めごろに村にやってきた孤児たち。桜並木やサクランボの話をガズゥたちから聞いていたせいか、今年の花見を楽しみにしていたようだ。


「いえいえ」

「このえだが、おおきなきになるの?」

「そうよ」


 私が手にしている枝は、昨日野菜を持ってきてくれたガズゥにお願いして、ログハウスの敷地の桜の木から数本、切ってもらったものだ。

 そのガズゥは、今日は大人たちと一緒にエイデンの山のダンジョンに行っている。


「サツキ様、これで足りますか?」


 温室の入り口から声をかけてきたのは孤児院の年長組のマークとケイン。

 彼らはドワーフの家周辺の桜の木から切ってきてくれたようで、枝の束を差し出している。


「うわ、すごいたくさん。ありがとう」


 私たちは枝を受け取ると、黙々と黒いポッドに土をいれては桜の枝を挿していく。


「よし、あとはお水をあげなくちゃ」

『みずなら、わたしたちがあげるわよ』

『そうよ、そうよ』

「ありがとう。でも、あの子たちのお仕事をとらないであげて」


 水の精霊たちが張り切って言いだしたけれど、孤児院の女の子たちがすでに如雨露を持っていたのだ。

 それに気付いた精霊たちもしぶしぶ力を止めてくれた。


「はやくおおきくなってねー」

『そだてるのなら、まかせろー』


 水をあげている女の子たちの声に、今度は土の精霊たちが張り切りだす。

 そのおかげで……。


「うわー、はっぱがでてきた!」

「すごい、すごい!」

「のびてる、のびてる!」


 挿したばかりの枝なのに、葉は出るわ、枝が伸びていくわ……やりすぎじゃない!?


「ほ、ほどほどでいいのよー」


 そう声をかけたけれど、どうも子供たちの反応に気を良くし過ぎて、聞こえないらしい。


「根で黒ポッドが破けちゃうから、やめてー!」


 私が叫ぶことで、なんとか成長が止まった。

 すでに私の腰くらいまで育っている桜の苗木に、さすがに子供たちも声がない模様。


「あはは……はぁ……これは、明日にでも植えようかな」


 私の言葉に、子供たちはコクコクと頷くだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ