第530話 新しい土地を囲おう
澄んだ青空の下、桜の木の前には、小さなログハウスが5軒並んで建っている。
1軒は私とモリーナ、残り4軒はエイデンとネドリたち冒険者たちに使ってもらっている。
帝国のダンジョンに潜ってたネドリたちだけれど、無事に目的を達したようで、エイデンを追ってわざわざここまで来てくれたのだ。
しかし、あまりにも臭かったので(長期間、ダンジョンに潜ってたせい)、急遽ログハウスを作って、風呂に入ってもらった。本人たちは臭いに慣れてしまったのかもしれないけど、ちょっと近寄りたくないくらいには臭かった。
ちなみに私は、モリーナたちが来た時点でログハウス作って、速攻、風呂に入った。
そして今、私は『タテルクン』を使って大きいガーデンフェンスを作りまくっている。
桜の木やユグドラシルを植えたことで『瘴気』のあった跡地周辺は私の土地になってしまったので、しっかり囲ったほうがいいと思ったのだ。
このまま帝国のモノとかされたら、癪なので。
ログハウスは当然、私の土地の中に建っている。
「五月様、何かお手伝いすることはございますか!」
風呂上がりのネドリたちはヤル気十分。
「じゃあ、焼けちゃった倒木とか石とかを集めて、除けておいてもらっても?」
「かしこまりました!」
エイデンやノワールによって燃やされた木々が、あちこちに倒れているので、それを片づけてもらってから『整地』をしようと思ったのだ。
一応、桜の木とユグドラシルのおかげで浄化はしているのだけれど、地面が黒ずんでいるのが気になって。ただエイデンたちの火力で焼けただけかもしれないけど、『瘴気』の跡にも感じられて嫌だったのだ。
肝心のエイデンとモリーナだけど、再び城跡のほうに戻っている。何か気になるものがあったようなのだ。彼らの『気になる』は物騒なことしか思い浮かばないんだけど。
「はい、ウッドフェンス、ウッドフェンス」
ポンポンと設置されていくウッドフェンス。桜の木を植えながら周辺の木を『伐採』しておいてよかった。
一応、人の出入りできるドアを2か所、ホワイトウルフたち用の出入り口を2か所作っておいた。さすがにビャクヤクラスになると通れないけど、彼らならウッドフェンスを飛び越えられるだろう。
途中、お昼ご飯をはさんだものの、作業を続けていくうちに日は傾き、すっかり空が赤くなっている。
「よーし、これで最後!」
ウッドフェンスを設置したところで、大きな拍手がおこる。
「お疲れ様でした!」
「いや、さすが五月様です」
「五月様! 肉焼いときました!」
どうも夢中になりすぎたらしい。手が空いてしまったネドリたちが夕飯の準備までしてくれていた。肉はダンジョン産。何の肉なのかはわからないけど、いいニオイがたちこめている。
「ありがとうございます……エイデンたちは?」
随分と時間をかけているようだけど、何かあったんだろうかと、視線を向けると、ぼんやりとこちらに向かってくる姿が見えてきた。
「お疲れ様~」
「うむ」
渋い顔のエイデンと、なぜか疲れ果てて死んだ目になっているドレイク、そしてキラキラした目のモリーナの腕の中に、黒光りする……ダチョウの卵くらいの大きさの丸い物体。
なんか、どっかで見たことあるなー、と思ったのは私だけだろうか。
「……それ何」
「あー」
エイデンはどう言ったものか、と迷っている風だったのだけれど。
「サツキ様! 凄いです! これ!」
私の目の前に差し出された丸い物体。
「魔王の卵ですって!」
モリーナの嬉しそうな声が、夕暮れの空に響いた。





