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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
何かと忙しい三度目の冬

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第529話 アジトの話と、嫌な想像

 カレーを食べ終える頃には、すっかり日が落ちてしまった。

 食器やお鍋等をモリーナが魔法(確か『クリーン』と言っていた)で綺麗にしてくれたので、さっさと『収納』にしまうだけで済んだ。凄く便利な魔法に、ちょっといいな、と思う。

 パチパチと薪が爆ぜる音がする。


「それで、そのアジトってどんなだったの?」


 私たちは、食後のコーヒーを飲みながら、再び『瘴気』の跡地の話に戻った。

 食事中には相応しくないからと、エイデンがモリーナを黙らせてしまったので、ちゃんと話を聞けなかったのだ。


「あー、あれはですねぇ、ほんと、胸糞悪いっていうか」

「モリーナ、黙れ」

「ひっ、はひっ」


 ゴゴゴゴーっという効果音と黒い影をつけていそうなエイデンの様子に、モリーナも固まる。


「……魔法陣の中央にはたくさんの骨が山積みになっていた」


 その山積みの骨というのが魔物の骨なのか、人の骨なのか、判断がつかないほどボロボロになっていたそうだ。


「それ以外にも、あちこちに人の骨らしきものが落ちていた。そいつらがあの城に住んでたのかもしれんな」


 モリーナの『胸糞悪い』発言と、エイデンのいう状況で、ファンタジー定番の悪いヤツらの実験場だったんじゃないかっていう想像が頭に浮かぶ。

 自分でも想像力が逞しいとは思うけど。


 ――どんな悪いことをやらかそうとしてたのだろう。


 アンデッド系の魔物のこともあるし、寒さとは関係なく、ぶるるっと身体が震える。

 そういえば、ここは帝国の領土内。エイデンの馬鹿みたいな魔法に気付いて、やってくる人たちがいてもおかしくはないはず。

 そもそも、そのアジトに悪い人たちが全員いたという確信はないのだ。


「……調査隊みたいなのが来たりしない?」

「ああ、そういえば、森の入り口あたりをウロウロしている連中がいるな」

「え、いるの!?」


 エイデンやノワールのおかげで魔物や獣は近寄って来ないのだけれど、人となるとそれはまた別のようだ。


『だいじょうぶよぉ』

『あいつら、ぐるぐるまわってるだけ~』

『でも、あきらめないのね~』


 土や風の精霊たちの楽し気な声があがる。ちょっとだけ、やってきた人達が気の毒に思えた。


            *   *   *   *   *


 帝都にある魔塔の一室で、白髭をたくわえた年老いた魔塔の主が苛立たし気にウロウロと歩き回っている。


「なぜだ、何が起こった」

「塔主様」

「研究施設からの連絡はまだ来んのかっ」


 ドンッと黒いテーブルを叩き、目の前にたっている青白い中年の魔術師にあたりちらす。


「調査隊からの連絡もまだなのかっ」

「は、はい、まったく」


 身体を縮こませ、上目遣いに見る中年の魔術師の卑屈な様に、余計に苛立つ。


「どれだけ、時間をかけて『召喚』を研究してきたと思ってるっ」

「は、はい」


 何度も何度も実験を重ねて、つい先日、『召喚』が成功した。その時にやってきたのは、小さなウサギのような魔物だった。見たことのないグロテスクな姿と、攻撃的な性格もあって、パニックになった魔術師によって、すぐに殺されてしまった。 


『今度は、もう少し大きなモノを『召喚』することに挑戦してみます』


 意気揚々と言っていた研究施設を管理していた魔術師の顔が頭に浮かぶ。

 自信過剰な奴だったが、実力はあった。


「馬鹿者めっ」


 ぎりぎりと歯ぎしりする音が、薄暗い部屋に響いた。

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