表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
何かと忙しい三度目の冬

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

599/980

第528話 ある意味、モリーナ最強説

「ひどいですー!」


 モリーナが猛ダッシュで走ってきた。


「……もう瘴気はなくなってたんだから、問題ないだろう」

「いや、でもぉ」

「それよりも、五月、なんかいいニオイがするのだが」


 カレーの鍋も米を炊いた土鍋も『収納』にしまってあるのに、残り香に反応するエイデン。


「う、うん、一応カレーをね」

「おお!」


 目輝かせるエイデンに負けて、私はさっさと食事の準備をする。

 エイデンに置いていかれて拗ねていたモリーナも、カレーのニオイには負けたらしく、いそいそと私の手伝いをしてくれた。

 

「はー、やっぱり、五月のカレーは旨いっ!」

「美味しいですぅ~」

「……うまいぃぃぃぃ」


 三者三様ではあるものの、皆、美味しいと言ってくれた。

 自分では、どこの家でも作るような普通のカレーのつもりでも、ほとんど食べる機会がない彼らにしてみれば美味しく感じるものなのだろう。


「それよりも、中のほうはどうなったの」

「ん? (もぐもぐ)」

「ほら、『瘴気』を発生させてた原因よ」

「んぐ。ああ、それのことか」


 エイデンは皿に残っていたカレーをかきこみ、水の精霊がいれてくれた冷たい水で飲み込む。


「あー、結論からいえば、ちゃんと破壊してきた。だから、ほら」

「え、あんなにあった『瘴気』がない」


 先程まで真っ黒な靄で先がまったく見えなかったのに、今は靄も晴れて、たくさんの燃えた木々が倒れた真っ黒な焼け野原になっている。

 中央のあたりが少し盛り上がっているように見えるのは、岩? 


「瘴気が出てたのは、中央にあった建物からだった」

「え、こんな森の奥に?」

「ああ。まぁ、あそこまで濃い瘴気の中で生きている者などはいなかったがな」

「そうですよぉ、サツキ様。私もまさか、瘴気の中にスケルトンとかグールとかいるとは思いませんでしたわ」

「え」


 なんでも『瘴気』の中央に行くほどにアンデッド系の魔物が現れ始めたのだとか。

 アンデッドって、幽霊とかゾンビとか、そういう系のことか。

 映画やドラマで見ることはあっても、こっちのグロテスクな魔物を見たことがないので、想像がつかない。


「私はエイデン様の結界の中にいたんで問題はなかったんですけど。エイデン様が腕を振るたびに消されていくのは見事としか言えません~。ただ、そのたびに甲高い悲鳴あげるからうるさい、うるさい」

「……全然、戦っているような音なんて聞こえなかったんですけど」

「そりゃぁ、エイデン様が遮音の……」

「モリーナ、黙れ」

「ひっ、は、はひっ」


 エイデンの低い一声で、固まるモリーナ。


「そ、それにしても、アンデッド系の魔物って、こんな森の中にいたりするの?」

「アンデッド系の魔物は、ダンジョンで自然発生的に生まれるのが一般的だ。しかし、森や洞窟などの奥地で死んだ者が、ちゃんと埋葬されずに瘴気に飲み込まれると、アンデッドになることもある。しかし、ここのは、数が多すぎた」


 エイデンの言葉に嫌な予感がする。


「魔物を振り払いながら進んで行くと、石壁で囲われた小さな城跡にたどりついたんだ」

「お城? こんな深い森の中に?」

「ああ。その城の中庭から延々と濃い『瘴気』が吹き出すようにあふれていたのが見えた」


 そこでエイデンが言葉を止めるから、思わず、ゴクリと唾をのみこむ。


「もう、最低ですよねー。あんなとこに魔法陣描いて、『瘴気』を溢れさせるとか」


 しかしモリーナの能天気な声で、一気に気が抜けた雰囲気になってしまった。


「私、思うんですけど、あそこ、絶対、悪い奴のアジトだったに違いありません!」


 スプーンを振り回しながら、断言するモリーナ。


 ――そうだねぇー(棒読み)


 エイデンの冷たい視線に気付きもしないで、カレー旨い、と食べ続けるモリーナに、ある意味、尊敬の念を抱いた私であった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ