第522話 緊急事態発生らしい
わちゃわちゃと精霊たちが言うことには。
「瘴気があふれてヤバいってことはわかった」
『そうなの! そうなの!』
『ヤバいの! ヤバいの!』
「で、それは、どこ?」
『あっち!』
精霊たち全員が揃って指をさす。方向的には南のほうで、うちの山とは反対方向なのはわかる。私の目でわかる場所ではないし、ハクたち曰く『瘴気』は相当ニオイが酷いらしいのに、そのハクたちの嗅覚にも引っかからないくらいなので、相当離れているところなのだろう。
しかし精霊たちの慌て具合を見ると、本当にヤバいのかもしれない。
「それで、私はどうしたらいいのかな」
逃げろというなら逃げるけど、わざわざ私に知らせに来たのだ。私に何か出来ることがあるのだろう。
『じょうかして!』
『じょうか!』
――じょうか……浄化かぁ。
精霊たちは簡単に言ってくれるが、私自身に浄化の能力があるわけではない。
私が育てた植物に浄化機能がついているのだ。
今、浄化機能のある苗木は温室の中の、アボカドとマンゴー。この寒い時期に外に植えるのは無理だ。植えても、すぐに枯れてしまうに違いない。
となると、私の頭に浮かぶのは、ドワーフの家近くの桜並木の桜。
「それって、桜の木、1本あれば足りるかしら」
『たりない!』
『ぜんぜん、たりない!』
『エイデンでもおさえるのにせいいっぱい!』
「え!?」
「それって、マジで緊急事態じゃない!」
『だからいってる! ヤバいって!』
あのエイデンが、と思うと驚きが隠せない。
私はハクの背中に乗ると、大急ぎで村へ戻るようにお願いする(今回はちゃんと風の魔法で守ってくれるようにお願いした)。
獣人の村の桜並木に到着すると、桜を『鑑定』しながら『収納』していく。
「五月様、どうかしましたか」
私を乗せたハクたちが集団で現れたので、住人たちも何事かと集まってきたようだ。
「あー、うん、ちょっとね」
上手く説明できないので、笑って誤魔化していたんだけど。
「なんだって!」
土の精霊の言葉がわかるドレイクが、大きな声で叫んだ。おそらく、風の精霊の話を聞いた土の精霊が教えてしまったに違いない。
そうなると、皆、話を聞くためにドレイクの方へと集まり、話がドンドン広がっていく。
獣人たちの顔は恐怖のせいか、ひどく青ざめている。時に魔物には嬉々として立ち向かうのに、『瘴気』にはこんなに怖がるのか、と、改めて『瘴気』のヤバさを感じる。
「サ、サツキ様、この村ぁ、大丈夫でしょうか」
「に、逃げる準備を」
「そ、そうだ」
――あー、もう、急いでるのにっ!
「あのねぇ、私たち、エイデンの城の山の隣の山にいたけど、ハクたちも感知しなかった『瘴気』なのよ? そんな今日、明日でここがどうにかなる距離じゃないと思うの。これから、ちょっと行ってくるから、もうちょっと落ち着いてちょうだいよ」
私の言葉に、無言になる獣人たち。
その合間にも桜をどんどん『収納』する。戻ってきたら、また挿し木で増やさないといけないかもしれない。
「それに、今はエイデンがなんとかしてくれてるようだし、もうちょっと待っててくれる?」
「ああ、エイデン様が」
「だったら、大丈夫じゃねぇか」
……獣人たちのエイデンへの信頼度の高さに、なんだかちょっとイラついた。





