第515話 石畳を敷いてみる
元日からずっと雨や雪が降ったりやんだりしている。雪が薄っすらと積もることはあっても、すぐに溶けてしまう。そのせいで、ログハウスの敷地はずっと乾くことがない。
1週間近くたった今日も、パラパラと雨が降っている。
この天気でしばらく村の方には行けてない私は、家の中で敷地のことや、イグノス様から頼まれている山のメンテナンスのことを考えてはいたのだ。
特に、今、早急になんとかしたいのは、ログハウスの前の状態だ。
せっかくウッドチップを綺麗に敷いていた地面が、ドロドロのぐちゃぐちゃになってしまっている。
原因は、ホワイトウルフのちびっ子三匹。
雪が降るたびに、わざわざ遊びに来てくれるのはいいのだけれど、はしゃぎ過ぎて泥だらけになるのだ。特に、三つ子唯一のオスのムクは自由過ぎて、注意しても興奮してしまって我慢が効かないらしい。
さすがに雨の今日は来てはいないけれど、さすがに私も我慢の限界。
「よし。やってみるか」
ログハウスを出て東屋に入る。
タブレットの画面でも確認できるとはいえ、目の前で作業(?)を確認したいのだ。
『なに、なに』
『なにはじめるの?』
精霊たちが集まってくる中、ダウンジャケットにダウンパンツと完全防寒の私はタブレットを片手に『ヒロゲルクン』で地図を開いた。
表示されたのは、ログハウスのある敷地。画面の地図に指をあてると、トンネル側の門から桜並木のある門まで範囲を指定する。幅は軽トラの横幅よりも少し大きめ。
「石畳、石畳……あった。これこれ」
事前に材料の有無とデザインも考えてある。
本当はテラコッタ風の敷石を敷いてみたかったけれど、残念ながら『収納』に入っている石の素材にはない。
この前、エイデンの山の斜面で葡萄畑を作った時に、大きな石や岩をいくつか取っておいたものがあるので、これを使うことにした。
敷き方もいくつかの種類があったけれど、自分でDIYするのは無理そうな『乱貼り』を選択。
「ポチっとな」
もうこれは口癖だ。変えられない。
ストトトトーンと石畳が伸びていき、白っぽかった石が、雨でどんどん黒ずんでいく。
「おおおお~」
『おおお~』
『おおお~』
感嘆の声をあげる私の真似をして、精霊たちも声をあげる。
「え、なんかいいかも」
思っていた以上に綺麗な石畳ができた。
私は小屋に駐車していた軽トラに乗り込み、石畳の上を走ってみる。石畳の表面は多少の凹凸があるのでカタカタ揺れるけれど、濡れてるところを歩いた時に滑る危険が少なそうなので、よしとする。
――せっかくだったら、トンネル側の道も、桜並木の道も石畳に変えようか。
そんな考えがよぎったものの、材料となる石が足りなかった。残念。
ちなみにエイデンがトってきた、どこかの石壁の石は四角いものばかりで『乱貼り』には向いていないし、他の敷き方(レンガ敷きとか市松敷きというのがあるらしい)にするにしても中途半端な量しかなかった。
天気がよくなったら、獣人たちやビャクヤにでも、大きな岩や石のあるところを聞いてみてもいいかもしれない。





