第514話 家周りのことを考える
おせちと雑煮に満足したエイデンは、昼前には自分の城へと帰っていった。
「はぁ」
食器を片付け終えて部屋の中もスッキリ。ようやく一人になれて、ホッとする。
正確には精霊たちもいるし、マリンもいるけれど、大柄なエイデンがいると、このログハウスでは圧迫感があるというか。
基本、一人で住む前提で作ってあるログハウス。私だけなら十分な広さだ。
今までは、うちのログハウスにお客さんが来ても東屋で済ませていた。
ただ、天気が崩れた時に吹き込んでくる雨には不便を感じたのは確かだし、寒い時期はキツイ。
それに遅くなった時に泊められる場所もない。
獣人たちだったら、夜道でもサッサと帰れそうだろうけれど、今ではそれ以外の種族も住んでいる。特に孤児院の子供たちは、村までの距離はかなり遠いし、ホワイトウルフたちのおかげで魔物はいない(はず)とはいえ、夜道は危ない。
「離れでも作るのもいいかもね」
そう呟いて窓の外を見ると、すでに雪は止んでいて、ホワイトウルフたちが走り回っていた。ここで騒ぐのは、三つ子たちだ。
「ああ~」
雪といっても、それほど積もっているわけではないようで、白かった地面がどんどん黒く変わっていく上に、ホワイトウルフの真っ白な毛皮がすでに泥で汚れていく。
彼らにしてみれば、気にもならないんだろうけれど、後で毛梳きをする毛梳きチームの老人たちのことを考えると、気の毒になる。
でも、雪が積もって真っ白な場所があったら、走りたくなるのがホワイトウルフの性なのかもしれない。
――絶対地面、ボコボコになってるわ。
一応、ウッドチップを敷いた場所もあったはずだけど、彼らの足で走り回ったら、ぐちゃぐちゃになっているだろう。
また整地しなおさないといけないと思ったら、ちょっとうんざりした気分になる。
――どうせなら軽トラが通れるくらいの幅の石畳でも作る?
確か『ヒロゲルクン』のメニューの中に、道を作るメニューもあったはず。
さすがにアスファルトは無理だろうけれど、コンクリートなら材料があればできるかもしれない。でも、ログハウスの雰囲気なら、石畳のほうが似合いそうな気がする。
道を舗装するといえば、村からケイドンの街に向かう道も、途中まででもいいからなんとかしたい。
――今年は、家周りを充実させようかな。
そんなことを考えながら、ホワイトウルフたちを見ていたら、私の視線に気付いた一匹がこっちに向かってやってきた。その後を2匹もついてきた。
『サツキ! あそぼう!』
『あそぼう! あそぼう!』
『……あそぼ』
「いやいやいや、あんたたち、泥まみれ!」
部屋の中で思わず叫ぶ私。
『あんたたち、きたない』
そして、いつの間にか窓際にいたマリンは呆れた目を彼らに向けると、冷ややかに言う。
ガーンとショックを受ける2匹(たぶん、ウノハナとシンジュ)と、気にせずハァハァと息を吐きながら尻尾を盛大に振っている1匹。
――可愛いんだけどねぇ。
思わず苦笑いを浮かべる私であった。





