第501話 孤児院の食料事情
マグノリアさん一家は宿舎へと戻り、私は孤児院で夕飯をいただいてから、ログハウスへと戻ることにした。
テーブルに出されたのはバカラモとベーコンらしき肉の欠片の入ったスープと、黒パン。
私もありがたく頂戴したけれど、正直、味付けは物足りないし、量も足りない。私が足りないと感じるのだから、育ち盛りのマークたち年長組はもっとじゃないだろうか。
チラリと彼らの様子を伺うと、文句を言わずに食べている。むしろ、自分より小さい子たちに分けてすらいる姿に、ほろりとしてしまう。
食料は村で買取をしているようだけれど、多くは寄付なのだそうだ。
一応、ピエランジェロ司祭がガズゥたちの勉強を見ているので、多少の授業料はもらっていたり、年長組の子供たちは村の手伝いをしていたりするので、その小遣いもあるようなのだが、17人の孤児を養うには足りないだろう。
ちなみに、年長組の男子のマークとケインは冒険者登録はしていると聞いているが、獣人たちから言わせると、一緒に狩りに行けるレベルではないらしい(獣人たちが狩りに行く場所が、普通の人族には厳しいだけな気もするが)。
私もたまに作業の手伝いをお願いした時、果物やお菓子を渡しているものの、一緒に食事をしてみて、全然足りないと痛感した。
――でも、安易にボンッと渡してもなぁ。
私の自己満足だけで、この子らがそれを当然と思うようになったら、凄く嫌だ。
村の人たち同様、彼らに何かしらのお手伝いをしてもらう機会を増やすとか、考えたほうがいいのだろうか。
「ごちそうさま。おいしかった」
「ウフフ」
ベシーとルルーが嬉しそうに笑っている。彼女たちが中心で作っていたのだろう。
食事を終えた私が片付けをしようとしたら、子供たちが率先して皿を取っていったので、お任せすることにして、教会を後にした。
翌日、私は朝早くから立ち枯れの拠点の敷地に立っている。
少し前までは、ママ軍団にお任せして希望の野菜を植えては、お世話を頼んでいたんだけれど、最近は皆妊婦さんになって、体調があまりよろしくないということで、放置状態になっていた。
そこで考えたのだ。ここを孤児院の子たちに任せようかと。
ママ軍団の時も、収穫したものの一部を私にも渡してくれるようにお願いしていたのだ。それを彼らにもお願いしようと思うのだ。
タブレットを片手に目の前の畑に何を植えようかと悩む。『ヒロゲルクン』の『畑』のメニューであれば、季節関係なく育つ。
昨夜の孤児院のスープを食べた時、葉物野菜が足りないと痛感した。
――やっぱり、ほうれん草とか、キャベツとかかなぁ。
とりあえず、『畑』メニューの野菜をポチポチと選んで行くと、綺麗に畑へ苗が植えられた状態になっていく。
「ここの畑、少し早めに育つようにしてくれる?」
私の周りを飛び回る土の精霊にお願いする。
『いいよ~!』
『まかせて、まかせて!』
『やったー! ひさしぶりのさつきのおねがいだ~!』
……ちょっとテンションに不安を感じはしたものの、ヤル気があるのはいいことだ、と思うことにする。
「よし、あとは、ベシーにでもお願いしておけばいいかな」
あと考えているのは、魔物の肉の燻製作りの手伝いを年長組の男子たちに任せられないかどうか。『収納』の中には、エイデンやビャクヤたちからの貢物がたんまり入っているのだ。
どう話そうかなぁ、と考えながら村の方へと向かっていると、精霊たちが騒ぎ出した。
『エイデンだ』
『エイデンが帰ってきたぞ』
『ノワールもいる~』
その声と同時に影が落ちる。
空を見上げると、バカでかい古龍と、小さいノワールの飛んでいる姿が目に入った。





