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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
何かと忙しい三度目の冬

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第500話 ケーキと子供たち

 村に着いたのは、すっかり日が落ちてしまった頃。

 ついつい子供たちのおしゃべりに付き合いながら歩いていたら、そんな時間になってしまった。

 以前の村は日が落ちたら家の窓から漏れる灯りだけで、かなり暗かったのが、モリーナのガーデンライトのおかげで、大分明るくなっている。

 ちなみに、もう少し光量を抑えめにしたモノをいくつか買い取って、立ち枯れの拠点に向かう道にいくつか設置してある。残念ながら木が茂って日差しがあまり入ってこないせいか、少し薄暗いけど、真っ暗よりもかなりマシだ。

 ちょうど夕飯の時間なのか、料理の匂いがあちこちから漂ってくる。


「俺、ザックスとフェリシア、呼んでくるっ!」

「え、あ、ちょっと!」


 孤児院の年少組の男の子、エフィム(10歳)とボルト(9歳)が、私が止める間もなく、村の門から駆け出していく。他のちびっ子たちも追いかけるように走り出したものだから、慌ててしまった。

 マグノリアさんたちは、昨日村に到着して宿舎で過ごしてもらっているものの、ピエランジェロ司祭から村のことについて、どこまで説明してあるのか知らないので、村の中まで入れていいのかわからない。

 先にガズゥたち獣人の子にケーキの皿を渡して家に帰るように促すと、私は教会や孤児院へと向かった。ここでもモリーナのガーデンライトは活躍中だ。


「サツキ様!」


 先に戻ってきた子供たちからケーキの話を聞いたのか、年長組のマークが孤児院から出てきていた。

 ケーキを渡すので、と孤児院の中へ入るように促す。ちょうど、夕飯の準備中だったのか、ピエランジェロ司祭とベシーやリンダといった年長組の女子が、食堂のテーブルに何も入っていない皿やカトラリーを並べていた。


「サツキ様、いかがなさいましたか」


 私の来訪に驚くピエランジェロ司祭。私自身、あまり孤児院や教会に来ることがないので、驚くのも無理もない。


「実は、子供たちと一緒にケーキを作ったものですから」

「ケーキ、ですか?」

「ええ、手作りなんで、あまり上手ではないんですけど……」

「そんなことないです! 司祭様! 凄く美味しいんですよ!」


 お手伝いメンバーの子供たちがワイワイと声をあげる。


 ――いい子たちや~。


 内心、そう思いながら、ニコニコしながらテーブルの端にケーキののった皿を並べていく。


「食後のデザートにでも食べてください」

「おお、随分と贅沢なケーキですね……これはクリームでしょうか」

「あ、はい。そんな贅沢というほどのモノは使ってませんから」


 実際、卵や飾りとなる果物やジャム、採れた物を使っているし、生クリームやホットケーキミックスはまとめ買いでかなり安いのだ。

 それに、ちょっと失敗してるのもあるので、あんまり感激されるのも心苦しい。


「あ、ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」


 テーブルの端にケーキののった皿を出していくと、一人一人、受け取って自分の席に置いていく。皆、キラキラした笑みを浮かべていくので、私も嬉しくなる。


「サツキ様~!ザックスたち、呼んできた~!」


 エフィムが食堂のドアを開けて、大きな声をあげながら入ってきた。

 寒い中やってきたせいで、鼻や頬が赤くなっているザックスとフェリシア。

 すっかり足の傷が治ったザックス。ただ、きちんと食事をとれていなかったせいか、だいぶ細く、マークと同い年ぐらいのはずなんだけど、ザックスのほうが頭一つ分くらい小さい。

 

「あ、あの、何か頂けると聞いたのですが」

「うん、これ、皆で作ったケーキなの。よかったらお母さんと一緒に食べて」

「ケーキ?」


 ケーキののった皿を受け取り、首を傾げるザックス。


「すげー、うめー!」


 背後で、年少組の男の子の声が聞こえた。夕飯の後と言ったのに、もう食べてしまった子がいたようだ。ベシーの叱りつける声も聞こえてくる。


「うん、まぁ、美味しく出来てるみたいだから……あ、マグノリアさん」


 二人のことが心配だったのだろう。マグノリアさんも後から追いかけてきたようだ。


「もう暗いのに、ごめんなさい」

「い、いえ。あの、それは」

「子供たちと作ったお菓子です。マグノリアさんもよかったら召し上がってください」

「まぁ。よろしいのですか?」


 申し訳なさそうな顔になるマグノリアさんに、どうぞ、どうぞ、とテーブルの上の皿を渡す。

 体調は回復したようだけれど彼女も痩せすぎだ。


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