第495話 マークの友達
私たちがガラスの話をしている間、マークは工房で働いていた孤児院の先輩たちと最近の街の様子を話していたそうだ。
「実は、スラム街に友達がいるんです」
なんでも、マークと同い年くらいの男の子が母親と妹と一緒に暮らしているらしい。
マークとその友人は一緒に冒険者ギルドに通っていた仲だそうで、同じ依頼を受けて、ちょこちょこお小遣いを稼いでいたそうだ(マークが冒険者の登録してたなんて、知らなかったよ!)。
孤児院がうちの村に来るまでは、元気そうにしてた友人だったそうなのだが、少し前に依頼に失敗したらしく、大怪我をしてしまったそうだ。
「それで、奴の治療費のために、母親が借金してしまったらしくて。ただ、その借金した相手が悪かったらしく、借金のカタに、妹を渡せと言ってきているらしいんです」
うわー。
典型的な借金取りっぽい。
「その妹っていうのは?」
「正直、本当に奴の妹かってくらい可愛いんですよ。年は確か、8歳くらいで……そう、あの、並べていうのも図々しいんですけど、キャサリン様みたいっていうか」
おやおや。キャサリンなみってことは、相当可愛いってことだろう。大人になったら美人になること間違いなし。それを見越した借金取りってところだろうか。
――許せん。
「そのお友達は、怪我はもう治ったの?」
「はい、治りはしたようなんですが……怪我が足だったらしく、魔物討伐みたいに稼げる依頼は受けられなくなったみたいで」
今では妹さんと一緒に、街中の雑用依頼をこなしているらしい。ちなみに母親の方は、身体が弱いらしく、家で針仕事をやっているのだとか。
――そんなんじゃ、いつまでたっても借金は返せないよね。
「俺、何もしてやれない、って思ったら、なんか……」
そりゃぁ、15歳の少年には、無理だろう。
「……それは、もしや、マグノリアさんのことかね」
ずっとマークの話を聞いていたピエランジェロ司祭が、深刻そうな顔で聞いてきた。
「あ、は、はい。マグノリアおばさんのところの、ザックスとフェリシアのことです」
「ああ、なんてことだ」
「……どうしたんです? 司祭様」
私の問いかけに、ギュッと口元を引き締める司祭。凄く悩んでるのがわかる。
「……サツキ様」
「う、うん?」
「……大変、大変、申し上げにくいのですが」
司祭がカッと目を見開き、何か言おうとしたその時。
「はい、お待ちぃ~」
女将さんが大皿に山盛りの茹でたイモと肉(何の肉だかは不明)を煮たのを、ドンッ、ドンッと2皿、テーブルに置いた。その後をついてきていたウェイトレスの女の子が固パンやニョッキっぽいものを並べていく。
「あとは、お姉さんたちのだね、ちょっと待っててね」
その場の空気を読まずに、女の子がにこりと笑って厨房に戻っていく。
なんか真剣な空気が削がれてしまった。
「……まずは、食べてからにしましょう」
空腹じゃ、頭はまわらないし、悪いことしか思い浮かばない。
私の言葉に、皆は頷くと、さっさと料理に手を伸ばしたのであった。





