第488話 ガーデンライト(2)
結局、ガーデンライトは分解されるだけされて、元には戻らなかった。それは、想定内。
しかし、さすがにマズイと思ったのか、修理してもらおうと、モリーナは師匠であるギャジー翁へと送ったらしい。
郵便局も宅配業者もいないのにどうやって? と思ったら、小物であれば転送できる転送箱(これも魔道具)をギャジー翁に持たされてきたのだとか。
そんな便利な物があるのか、と感心してたら、これは使用者の魔力と魔石が必要で、送受信の相手も固定なんだそうだ。便利なようで不便だ。
「サ、サツキ様」
山の葡萄畑に向かう道に、ウッドチップを撒いていると、モリーナがヘロヘロになりながら走ってきた。
「どうしたの、珍しい」
ほとんど店の中から出てこないモリーナ。出てきても、村の中くらいなのだ。
「はぁ、はぁ、サツキ様、がーでんらいと、戻ってきました」
「へー、さすがだね」
「で、あの、ギャジー翁が作った物も送って下さったんです、それを見て頂きたくてっ」
「へっ!?」
修理するくらいだったら、そう時間はかからないかもしれないけど、まさかのガーデンライトの魔道具化!
それは気になる、ということで、モリーナの店へ行って見せてもらった。
「ちょっと大きいね」
修理したガーデンライトと並べると……同じような形ではあるものの、大きさは倍くらい。ちゃんと光るかどうかは、夜にならないとわからない。
どういった素材で出来ているのか、不思議。
手にしてみると、思ったよりも重い。ランプの部分は魔道具のランプと同じようだけれど、屋根部分に貼られているソーラーパネルの部分は、ざらりとした板状の石なのか、別の物なのか、それが貼られている。
一応、ギャジー翁から設計図らしき物も送られてきているそうなので、素材さえあればモリーナでも作れるはずだという。
「え、モリーナでも作れるの?」
「作れますっ!(新しく作るのは苦手ですけど)」
「そ、そう?」
気合の入ったモリーナの勢いに気圧されてしまった私。
作れるのなら作ってみたら、とモリーナに任せることにした。正直、彼女に作れるとは思えなかったのだ。
そして2、3日経った、クリスマス直前。
残念ながら雪は降らず、夜空にはキラキラと星が瞬いている。
「さ、寒い~っ」
「五月様、早くっ、早くっ!」
もうすぐ完全に日が落ちるという頃、ガズゥ、テオ、マルと一緒に、スーパーカブで村のほうに向かっている。
モリーナが、ギャジー翁の設計図を元に魔道具のガーデンライトを作ったというので、見に向かっているところだ。
形ができてもちゃんと光るかどうか、その確認をしてほしいのだとか。
村の近くまで来たので、スーパーカブを停めて中に入る。
「こっち、こっち!」
ガズゥに言われるまでもなく、そこがめちゃくちゃ明るくなっているのは私でもわかった。
場所は、ドワーフたちの家が集まっている場所。前に見た時は、もっと暗くて、夜は歩きたくないなって思ったのに。
「……ちょっと、明るすぎない?」
都会の繁華街か、というくらいに明るい。
私が買ってきた街灯タイプのガーデンライトや、ギャジー翁の大きいガーデンライトも点いている。明るさは似た感じ。
だけど、それらの何倍も明るいライトがいくつか並んで足元を照らしている。大きさは、ギャジー翁の半分くらい。修理してもらったのと同じくらいだろうか。
――凄い、小型化したの!?
たった2、3日だ。
もしかして、モリーナは改造するのが得意なんだろうか。
「サツキ様っ!」
嬉しそうに胸をはったモリーナが、私に向かって手を振っている。
周りには村人たちは眩しそうな顔をしながら、私のほうへ顔を向けた。
「どうですかっ!」
「う、うん、凄いね」
凄いっちゃ、凄いんだけど……こんな明るくて……皆、寝られるんだろうか。
チラリとその場にいる村人たちの顔を見たら、皆渋い顔になっていた。
その後、モリーナ製のガーデンライトを村の中に分散させることにしたのは、言うまでもない。





