第470話 エルフたちの仕入れと、ギャジー翁の手紙
グルターレ商会は村で色々な物を仕入れることができたようで、カスティロスさんもホクホク顔で帰っていった。
買い取られた物の多くは、エイデンの城のある山のダンジョンで獲れた魔物の素材が大半だった。どうも、他ではあまり流通していない物らしく、村人たちもよその街には売りに行きづらかったらしい。
そういう物だからなのか、カスティロスさん以外のエルフたちも目が爛々となって、ちょっと怖かった。
Bランクパーティの『焔の剣』の面々も、どこのダンジョン産なのか気になったようだけれど、そこは内緒となった。
そもそも、村人にならないと行けない場所だから、彼らが知ったところで、入れないのだ。
次にオババたちのポーション類が爆売れした。
前回来た時もオババのところで買っていったそうなのだが、その時は自分たち用にと、1、2本予備に買うだけだったそうだ。
しかし、行商の途中、魔物と遭遇した時があったそうで、虎獣人のキャシディさん(というらしい)が、深手を負ったそう。その時にオババのポーションを使ったら、あーら不思議、傷跡を残さずに完治してしまったのだそうだ。
そこでカスティロスさんは、冒険者たちの間で噂されていることを思い出したそうだ。
なんでも、一部の狼獣人たちが持っているポーションの効きが凄いらしい、どんな大けがでも、すぐに治ってしまうポーションがあるらしい、とか。
……誰が大けがしたのか、凄く気にはなったけれど、誰かが怪我をしたという話を聞かないので、大丈夫なんだろう。
オババのポーションは数は多くなかったので、弟子になった孤児院の子たちのポーションまで買って行ってくれたそうだ。
効能はオババの保証付きなので、問題はないんだろう(子供たち、凄い)。
他にもドワーフたちの作った物(生活用品から武具まで)なども買取してもらえたようだ。
カスティロスさん曰く、以前作っていた物よりも、かなり質の高い物になっているらしく、かなり驚いていた。
それ以上にカスティロスさんが驚いたのは、火酒作りの一族であるゲインズさんがうちの村にいたことだ。
そのゲインズさんが、今年は無理だけど、来年には新しいお酒が出来るだろう、と、自信満々に言っていたそうだ。
……私は本当に大丈夫なんだろうか、と少しだけ心配だ。
そして、チーズ職人に渡してもらうためのお試し用に用意した牛乳。
念のためにとエルフたちが味見をしたら、気に入ってしまって、空っぽになってしまって、追加で渡すはめになる始末。
今頃、カスティロスさんのマジックバッグ(時間停止機能付き)は、同行しているエルフたちにロックオンされているに違いない。
そのマジックバッグの中には、私が書いた手紙も入っている。
カスティロスさんから渡されたギャジー翁からの手紙への返事だ。
ギャジー翁の手紙は、こちらの手紙特有の言い回しが多用されてて、読み解くのに苦労した。
要約すると、春になったら、一度こちらに来てみたいということらしい。訪問のお伺いってやつだ。
前々から、モリーナさんからの手紙で、変わった物があって刺激を受けていると伝わっていたそうだ。多少の関心はあったものの、モリーナさんからの手紙からの情報だけで十分だと思っていたところに、実物であるママチャリが届いた。
俄然、ヤル気になったギャジー翁だったけれど、修理が上手くいかない。
そこで、なんと大地くんが手伝ったら直ってしまったそうだ。大地くんは自分でも自転車乗ってるから、仕組みがわかっていたんだろう(私は、さっぱりだけど)。
他にも、こういう物があるなら、ぜひ勉強をさせていただきたい、というのだ。
――うちの軽自動車やスーパーカブが分解されたら、困るんですけど。
ギャジー翁が何に興味を示すのか、今からすんごい不安だ。
それでも、彼が作ったという魔道具の洗濯機のことを思うと、オーダーメイドで何か作ってもらうのもアリなんじゃない? と思ったり。
何を作ってもらうか、勝手に考え始めていたりする私なのであった。





