第465話 ローズヒップティー
緑茶の反応に気をよくした私は、先日摘んだローズヒップで作ったローズヒップティーを出してみた。
種をとったり、固いところをとったりした後、風の精霊に乾燥してもらって、全部ドライローズヒップにしたんだけれど、レギュラーサイズのジャムの瓶(再利用)がいっぱいになるくらいの量にしかならなかった。
その一方で、大量にもらったカナカの実は、半分をジャムに、残りを生食用とドライフルーツの半々にしてみた。
正直、生で食べるには甘すぎて、2、3粒で十分だった。苺とブルーベリーの中間のような味わい。とにかく、甘い。
砂糖なしで、ただ煮込んだだけ(変色防止でレモンは入れたけど)でジャムの出来上がり。
「よかったら、これも飲んでみて」
ハノエさんたちにローズヒップティーとカナカの実のジャムと、念のためにハチミツを出した。
「たぶん、かなり酸っぱいから、ジャムかハチミツを加えると甘くなるはず」
「もしかして、カナカの実?」
「そう」
テオママはローズヒップの味を確かめないで、すぐにカナカの実のジャムを入れてしまった。まぁ、酸っぱいしね。
一方でハノエさんとマルママは、何もいれないで飲んでしまった。
「何、これ。すんごい、酸っぱいんだけど」
「うううう~っ」
――うん、凄い顔になるよね。
「あはは、どうぞ」
ジャムとハチミツを差し出す。
二人はどちらにしようか迷って、チラリとテオママの様子を伺うと、テオママは美味しそうに飲んでくれている。
「私はハチミツでいただくわ」
「じゃ、じゃあ、私はカナカの実」
それぞれ、ハチミツとジャムをいれてから、美味しそうに飲んでくれた。
「ローズヒップって、美肌効果があるんですって。まぁ、飲み過ぎたらダメみたいだけど」
「なるほど……だから、最近、五月様のお肌が綺麗なのですね」
……うん?
「そうよね、ちょっと前まで、まだ日焼けが残ってる感じだったのに、もう白くなってるんですもの」
……うん?
「小さいシミも消えたんじゃない?」
「小じわもよ」
「シ、シミ!? 小じわ!?」
確かに目元にあった。小じわも。シミも。あったけど、シミは、シミと言い切りたくないくらい、薄っすらだったのに! マルママに気付かれてたのかと、ちょっと恥ずかしくなる。
――いや、それが消えたんだから、素直に喜べばいいか。
私は笑ってごまかすしかない。
「いくつになっても、綺麗でいたいものよね」
「ねぇ」
「そうねぇ」
――いや、三人とも、私よりも若いよね。
キャッキャウフフと楽し気に話す三人を見ながら、ずずずーっとローズヒップティーを飲み干し、遠い目になる私なのであった。
* * * * *
楽し気な4人を、東屋の上からのぞいている精霊たち。
五月たちの邪魔をしないようにと、大人しくしていたのだが。
『おやおやおや~』
『おやおやおや~』
『あたらしいいのちがめぶいてる~?』
『1こ、2こ、3こ~』
『むらのほうにもいたよねー?』
『こりゃあ、はるがたのしみだのー』
嬉しそうな精霊たちが、飛び回り、喜びがどんどん広がっていった。
……おかげで、五月の山では季節外れの花が咲いたり、新たな水源や鉱脈となる洞窟が出来たりと……そのうち、とんでもないことになる……予定だ。





