第463話 ローズヒップとカナカの実
あちらに繋がるトンネルに向かうほうの道沿いは、バラの垣根が続いている。
今では、様々な色のバラをトンネルの傍まで植えてあるので、時期になると、カラフルな上に、いい匂いまでする。車の窓を開けて走ったら、車の中の芳香剤なんていらないくらいだ。
しかし、今は秋咲きのバラもすっかり花も枯れて、紅葉した葉だけかと思いきや、一部の垣根に赤やオレンジの実がなっているのがある(ちなみに、バラの花びらは、ジャムにしたり、ポプリにしたりしている。全部ではないけど)。
春に咲いてたバラが実ったのだろう。いわゆる、ローズヒップって言われるヤツだ。ハーブティーでも聞いたことがあったので、これはやらねば、と思ったのだ。
「う、すっぱー!」
試しに1粒だけ齧ってみたんだけど、酸っぱすぎて無理。皮は厚めで、中に白い種がいっぱい入ってる。ピーマンの種みたい?
確か種をとってから皮を乾燥させたものを、ローズヒップティーにしたり、ジャムにもできると何かに書いてあった。
「とりあえず、大きめなのをっと」
まだ小さかったり、色付いていないのもあったので、結局集められたのは、あまり多くはなかった。
中サイズのジッパー付きビニール袋1袋だけ。
これだと、ジャムにしてしまったら、ローズヒップティーは楽しめそうにもない。
「ジャムは今度にして、ハーブティーにして楽しもうかな」
――確か、ビタミンCが豊富でお肌にもいいらしいし。
さっさと『収納』した私はホクホク気分で、ログハウスの敷地の方へと戻ろうとした。
「サツキ様っ!」
なんと、立ち枯れの拠点に向かう道から、コリンナさんとガズゥたちが現れた。
コリンナさんが来た日、すぐにガンズの元に行ったそうなんだけど、彼女のおかげなのか、ガンズはいきなり正気に戻って、今では快方に向かっているらしい。
――愛の力なのか!?
実際のところはよくわからないけど、なんにせよ、元気になってくれるにこしたことはない。
コリンナさん自身も、ハノエさんたちママ軍団に可愛がられていることもあり、早々に立ち枯れの拠点の中まで入れるようにした(リリスさんとケイトさんも結婚したので村人認定済み)。
「おや、どうしたの?」
「あの、メリーさんが持ってけって」
コリンナさんの腕の中には、大きなカゴに山盛りの……赤い実?
まさか、それって。
「ローズヒップ!?」
「ろーず? いえ、これはカナカの実です」
見た目は、どう見てもローズヒップなんだけれど。あとで『鑑定』してみよう。
どうもエイデンの山の北隣の山に、そのカナカの実の群生地を見つけたらしく、今日は女性たちだけで、カナカの実を採りに行ったらしい。
「おひとつどうぞ」
「え、ありがとう」
コリンナさんがカゴを差し出したので、ちょっと大きめな実を手に取って食べてみる。
「あ、甘~っ!?」
さっきのローズヒップの酸っぱさを予想してたものだから、想定外の甘さにびっくり。食感は皮はパリッとしてるのに、中はねっとりした感じ。種はかなり小さい。キウイの種みたいに食べても気にならない感じだ。
「この村はハチミツや果物が豊富なようなので、甘い物はそれほど珍しくはないでしょうけど、普通は、このカナカの実も貴重な甘味なんですよ」
そ、それは知らなかったよ。





