第462話 コリンナの告白
村へと戻る道すがら、ドンドンさんと一緒に来ていた狼獣人の話を聞く。
彼の名前はザインさん。狼獣人にしては小柄で身体の細い人だった。村人の多くは、狩りやダンジョンに入る者が多い中、ザインさんは主に、女性たちや老人とともに畑仕事に従事しているらしい。奥さんは若いころに亡くしていて、今回戻ってきたという娘さんを男手一つで育てたらしい。
見た目は、狼獣人にしては小柄で、名前はコリンナというそうだ。年齢は23歳。まだ独身だそうで、この世界では行き遅れに片足を突っ込んでるらしく、ザインさんは心配なのだとか。
――ここに、アラサーで独身の私がいますよー。
彼らには他意はないんだろうが、悪かったわね、と苦笑いしてしまうのは仕方がないと思う。言わないけど。
「近い所に住んでるの?」
ケニーたちが出かけて、まだ1週間も経ってない。
しかし、村の最寄りの街のケイドンまで、軽トラで半日近くかかる(馬車だと2日)。獣人の足であれば、往復で1週間かからないかもしれないが、獣人にとって住みやすい場所ではないから、ケイドンに娘さんがいたとは考えられない。
「いえ、娘は獣王国の街で仕事をしていたはずなんですが」
「何のお仕事?」
「冒険者ギルドで事務の仕事を……」
「へぇぇ!」
まさかの冒険者ギルド。
ガンズの方が先に村から出て行って冒険者になったそうで、コリンナさんは冒険者は無理でも、冒険者の仕事に関わりたくて今の仕事についたのだそうだ。
「今回は、ハク様たちのおかげで、すぐに戻って来れたようです」
なんでも、ケニーたちと一緒にホワイトウルフたちも一緒だったそうで、特にハクとスノーがいたおかげで、戻るのが早くすんだのだろう。
彼らのスピードだったら納得だ。
私たちが村の入り口についてみると、門のところにママ軍団が固まって楽しそうに話している。その相手が、ザインさんの娘さんなのだろう。
「お待たせ」
「ああ、サツキ様」
「お忙しいのに、すみません」
ケニーたちがぺこぺこと頭を下げるので、まぁまぁと宥める。
「で、こちらの方が……あれ?」
ケニーたちの背後から、少し青ざめた顔で現れた女性が出てきた。
「……なんか、ララさんに似てない?」
髪の色や、顔立ちが似た感じ。違うのは目の色くらい。
ララと違うのは、媚びたような雰囲気がないこと。
「そうなんですよね」
「ララを見た時、私もちょっと思った」
「ガンズも、分かりやすいよね」
ママ軍団の言葉に、思わず、ああ、と合点してしまう。
ガンズはコリンナさん似のララだったから、『魅了』もかかりやすかったのだろうか。
でも、二人は幼馴染なだけで、恋仲とかそういうのではなかったらしい。
「サツキ様、お願いです。ガンズ兄さんの看病をコリンナさんに任せたいのです」
ケニーとラルルが、跪いて懇願してきた。
その後ろにいたコリンナさんまで、跪かれて私も慌ててしまう。
「ああ、立ってください。そのー、コリンナさんって、仕事場に戻るのかな」
冒険者ギルドに、うちの村のことを報告とかされたら、面倒な事しか起きない気がする。
最悪は、精霊たちにお願いしてしまうしかないかもしれないけど。
「も、戻りませんっ」
「え」
「私は……私はガンズの傍にいたいのですっ!」
コリンナさんは、顔を真っ赤にして、大きな声で宣言したのであった。





