第458話 色気よりも食い気(服より食べ物)
ショッピングモールの中を大きなカートを押しながら歩く。
田舎のショッピングモールといっても侮るなかれ。有名なショップも入ってて、正直、どこで着るの? という服もある。買わないけど。
そんな中、私でも目が行くのはファストファッションの店。店頭には、季節の新商品がディスプレイされていて、こっちはすっかり冬モードなんだなぁ、と思う。
――そういえば、しばらく新しい服を買ってなかったな。
ついつい生活することが主体で、お洒落に気を配るまではなかった。
今日も、ジーンズに赤系のネルシャツにグレイのパーカーという、至ってシンプルな格好。髪もすっかり伸びて、後ろで黒いゴムで一本で結んでいる。
今履いているジーンズは、膝あたりが少し薄くなってきている。他のジーンズや黒のスキニーも、裾がすれてきてたりする。
――次に来た時に、買い換えよう。うん。
年内にここに買いに来るかどうかは、微妙な気がする。
……けして、女を捨てているわけではない。
一度、カートの荷物を軽自動車に詰め込んで、再びショッピングモールに戻る。今度は食品関係だ。
『収納』レベルMAXになったおかげで、ナマモノや消費期限を気にしないで済むようになった。そのせいで、爆買いのリミッターは外れまくり。
「やっぱり、魚介類は外せないよね」
手には業務用の冷凍のシーフードミックス。1キロのそれを、ポイポイッとカゴの中へ。
あっちで貝だと、ダンジョンの中で獲れる魔ガキしか食べたことないし、しょっちゅう食べる物でもない。川はあっても、海が近くにはないようだから、イカやタコの類は見たことがない。カスティロスさんにでも聞けば、もしかしたら知ってるかも?
冷凍の鮭の切り身も、忘れない。
マリンやノワールに頼めば、またラサロ(鮭みたいな魚)を獲ってきてくれるかもしれないけど、気まぐれだからなぁ。
「あ、ヨーグルト」
牛乳やバターは手に入るようになったけれど、チーズやヨーグルトのような発酵食品は、まだない。最終目標はチーズだけど、マカレナたちで作れるかといえば、そんな余裕はなさそう。牛乳を卸して、どっかで作ってくれるところでもあればいいんだけど。
――そういえば、ヨーグルトは増やせるんじゃなかったっけ。
何かで見た覚えがある。市販のヨーグルトを牛乳にいれて置いておくと、ヨーグルトになるはず。無限ヨーグルトに挑戦だ。
――後でネットで確認しよう。
いそいそと無糖のヨーグルトをカゴの中へ。
「後は、何があったっけ」
野菜や果物類は、今では畑で育てられるので買う必要がない。肉にしても、『収納』に色んな肉が残っている(遠い目)。
「あ、ソーセージとハム忘れてた」
生肉はいくらでもあるのに、自分で作るまでには至っていない。
もしかしたらケイドンの街あたりにはあるのかもしれないけれど、なんとなーく、衛生的に不安。獣人たちは時々変化の魔道具でケイドンまで買い出しに行っているようだけど、買ってきてもらう気にもならない。
この冬は、ソーセージとハム作りに挑戦してもいいかもしれない。





