第451話 女子は恋バナが大好物(1)
村の大きな東屋で、若手女子たちが、キャイキャイやっている(遠い目)。
「えー、それ、酷くなーい?」
「でしょ、でしょ?」
「ところで、そのお相手の方って」
私も、若かりし頃はこんな風に恋バナで盛り上がったっけ、と紅茶を飲みながら思い返している。
ゲインズさんの屋敷から出て村の中心に向かっている間、ポツポツと話を聞いたところによると、マリアンヌちゃんに婚約話が出ているらしい。
15歳で婚約!?と思ったけれど、11歳のキャサリンだって、王太子と婚約してたことを思い出して、こっちじゃ普通なのか、と思い直した。
その婚約に難色を示しているのがご両親とともに、祖父のゲインズさんなのだとか。普通、親とかから婚約の話がくるもんじゃないの? と思ったら、今通っている学校の先輩がお相手なのだとか。それって、すでにお付き合いしている相手なのかと聞けば、そうだという。ポッと頬を染めるあたり、ちょっと可愛い。
ほぇぇ~、と感心してたところで、孤児院の女の子たちと遭遇。村の畑仕事の手伝いの後、寺子屋にいるおちびさんたちを迎えに行くところだったようだ。
せっかくだったら同世代の子たちと話をしたほうがいいか、と、お迎えの後でお茶でもしようと誘ったのが少し前のこと。
東屋のテーブルの上には私お手製のアイスボックスクッキーに、ポテトチップスをお皿に載せて、皆にも紅茶をいれてあげる。
ここにいるのは、孤児院のベシー(15歳)、リンダ(14歳)、ルル―(12歳)に、マリアンヌちゃんと私。私だけ、アラサーで申し訳ないんだけど、一応、保護者枠ってことで。獣人の若者は、皆、山に入って狩りやらダンジョンに行っちゃうので、昼間はほとんど村にいないのだ。
「えと、学校の先輩なの」
「キャー!」
「どんな人?」
「背が高くて、金色の髪に、青い目が宝石みたいに綺麗なの」
「わー、王子様みたい!」
「アラン様もカッコよかったよね!」
「アラン様?」
「うん、王太子様!」
「オ、オウタイシ!?」
王太子と並べて話してもいいものか、微妙な気がしないでもないが、不敬だなんだと言う人がここにはいないから、まぁ、いいか。
「でも、ドワーフって金髪の人なんているの?」
「やだ、ドワーフじゃないわ。人族の方よ」
「えー! 人族なの!?」
それを聞いて、ハンネスさんの妹さんのことを思い出して、ちょっとだけモヤッたのは私だけではなかったようで。
「……その方、どういった方なの?」
一番年長のベシーが、心配そうに聞いてきた。
「フフフ、帝国の子爵家の方なの。学校で迷っているところで、私みたいな平民にもお声かけ下さったの。とても、お優しくて、私には勿体ないくらいなの」
「え、帝国?」
「ええ、私、帝国の帝都にある学園に通っているのよ」
たぶん、帝国の学園とかいうのは、ステータスのある学校なんだろう。マリアンヌちゃんも、学校を誇りに思っているように見える。
実際、ドワーフの帝国への留学自体が珍しいことだそうで、それだけマリアンヌちゃんが優秀なのだと思う。しかし、『帝国』というワードだけで、裏に何かありそうって思ってしまう。
「……凄く失礼なことを聞くようだけど、帝国でドワーフって、苛められたりしないの?」
人族の獣人の扱いを知っているだけに、思わず聞いてしまった。
「ないとは言えません」
マリアンヌちゃんは少しだけ声を落としてそう答えた。
彼女自身は祖父のゲインズさんという後ろ盾(火酒造りの一族)がいるので、そんなことはないのだけれど、お付きでついてきているメイドが、裏で色々言われているらしい。
うわー、めんどくさい。





