第447話 ララの正体
秋の山道に轟くスーパーカブのエンジン音。
私や村人たちはスーパーカブの音に慣れてるけれど、ボドルさんたちはそうではない。
「な、何事だっ」
「魔物、魔物かっ!」
立ち枯れの拠点の敷地の、村の石壁の裏手にスーパーカブを止めたんだけど、ボドルさんたちの怒鳴る声が聞こえてきた。うん、最初はそうだよね。ちょっと懐かしい気がして、空笑いが出る。
「お疲れ様です」
「サ、サツキ様」
「大丈夫でしたか!?」
「あ、あはは」
慌てているボドルさんたちに笑って答えていると、ちょうどハノエさんが家から出てきたところに遭遇。
「なに、どうしたのよ」
「いや、どうしたって、あんな大きな唸り声を聞いて、誰も出てこないのか」
「あれは、ホワイトウルフたちの唸り声なんかじゃないぞ」
「ああ、そうだ。もっとデカい何かだ!」
「唸り声?……あ、ああ! 五月様の『すーぱーかぶ』ね。聞きなれちゃったから、気にもしてなかったわ」
コロコロと笑うハノエさんに、どういうことだ、とボドルさんの方が困惑気味。
他の村人たちも出てきたけれど、状況がわかった途端、笑って仕事に戻っていく。
そんな村人たちの後からガンズさんも遅れて出てきた。周囲ののんびりした空気に頭をかしげている。そして、ガンズさんの後ろから、胡乱げな眼差しで顔を覗かせているララさん。
「ごめんなさいね。何でもないから」
ボドルさんたちは騒音の正体を知りたがったので、私の移動用の乗り物よ、と簡単に説明する。ハノエさんの身内だからといって、安易に立ち枯れの拠点の敷地へ入れるわけにもいかない。
ガンズさんとララさんも、他の村人たちに倣って、そのまま戻っていこうとしている。
――やばっ。タブレット出さなきゃ。
私は、ララさんを『鑑定』することにした。
この村にはいなかったけれど、多少の問題行動を起こす人は一定数いると思う。
ララさんが、ただの尻軽ちゃんなだけならいいんだけど(いや、よくはないか)、彼女の動きが怪しすぎるのだ。
そんな彼女を村の中に入れてしまった手前、やっぱり、ちゃんと調べた方がいいと思った。
正直今までは、プライバシーの侵害とか思って、個人情報を『鑑定』するのは避けていた。自分だって、あんまり見られて嬉しいものではないから。
しかし、村やうちの敷地のことに絡んでくるんだったら、そうも言ってられない。
「えーと『鑑定』っと」
去っていくララさんの背中にタブレットのカメラを合わせて『鑑定』してみる。
「えぇぇぇぇっ!?」
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▷ララ・ゴードル
種族:狼獣人(犬獣人とのハーフ)
性別:女
年齢:28歳
備考:ドグマニス帝国ゴードル子爵家 三女(養女)
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――まさか、10歳もサバよんでたの!?
それが通用しちゃってるのは凄い。獣人にも童顔っているんだ、と感心してしまう。もしかして犬獣人とのハーフっていうのもあるんだろうか。
しかし、それ以上に気になるワードは『ドグマニス帝国』。
獣人なのに、帝国の貴族の養女になれるのか、というのが不思議。一応、貴族の子女なわけだから、冒険者になんてならなくてもいいんじゃないか、と思うんだけど、そこはまた違う何かがあるんだろうか。
ガンズさんの腕に抱きつきながら歩いていく姿は、貴族には見えず、無邪気そう。ガンズさんは、ちょっとだらしない顔になっている。
そもそも、ガンズさんは彼女が貴族だって、知ってるんだろうか。
「全然、無邪気じゃないんだろうなぁ」
『じゃあ、けす?』
『けしちゃえ』
『いつでもいいよ?』
「いやいやいや、もうちょっと様子見よう?」
物騒なことを言う精霊に、苦笑いしてしまう私なのであった。





