第446話 トラブルメーカー・ララ
ボドルさんたちが村にやってきて3日程経った。
まだネドリたちは戻ってきていない。そのせいもあって、ボドルさんたちの結婚式は行われていない。結婚式の司祭のようなことをするのが、村長の務めの一つらしい。
ちなみに、結婚するのは ボドルさんとコントルさんのところだけ。
ガンズさんとララさんは、挨拶だけしにきたらしい。ガンズさんは結婚したいみたいだけど、ララさんはそれほど乗り気ではない模様。
新居についても、村長であるネドリの了解をもらっていないというのもあって、いまだにネドリの屋敷での居候になっている。
どちらもネドリ待ちってことだ。
私が新しくログハウスを作ったり、村の敷地を変えたりしてもいいんだけど、何せ、精霊指定要注意人物のララさんがいるので、何も出来ないでいる。
この前のララさんの騒ぎは、暗くて足元を見なかった彼女が、誤って転んだ、ということで落ち着いた。ララさん自身は納得はしてないようだけど、実際、そこそこお酒も飲んでたようだし、(精霊以外)誰もいなかったこともあって、彼女の思い違いじゃないか、となったのだ。
……村人たちは、精霊のことが頭によぎったかもしれないけど。
結局、大きな足跡についても、暗い中で騒いだもんだから、皆の足跡が重なって、わからなくなってしまった。
あったとしても、多分、うちのホワイトウルフたちだろう、という話になって、ララさんは彼らの存在を知らなかったせいか、ビビってた。
村人たちはそんなに怖がらなかったのに(むしろビャクヤたちを崇めてる)、同じ狼獣人のララさんの反応に違和感を覚えた。
人族の冒険者は確かに怖がってたし、もしかして普通はそういうものなのかもしれない。
ただ、単に、ケニーにちょっかい出す程度の尻軽ちゃんだったらいいけど、なーんか、それだけじゃないような気がしているのだ。
「おはようございます~」
今日はバターと牛乳が届く日。
洗濯物を干しているところに、マカレナとブルノが元気に配達にやってきた。
すっかりバター作りも慣れたもので、預けたタッパーに入れて届けてくれるのは助かる。
「いつも、ありがとうね。はい、これ新しいタッパーと瓶ね」
「はいっ! お預かりします!」
タッパーの中には、牛乳とバターの代金と一緒に私が作ったアイスボックスクッキーが入っている。バターはマカレナたちが作ってくれたのを使っている。
「うわ、これ、頂いていいんですか!?」
「ちょっと作りすぎちゃったのよ」
ついつい夢中になって、私一人で食べきれない量になってしまったのだ。
「ゲハさんと一緒に食べて」
「はいっ!」
マカレナは嬉しそうにタッパーと瓶をリュックにしまうと、手を振りながらブルノと一緒に帰っていった。
私も洗濯物を干し終えたので、今日は今年最後のハチミツ採取をする予定だったのだけれど。
『さつき~、あのメス、けしていい?』
「うぇっ!?」
突然、風の精霊の不機嫌そうな声がした。『あのメス』って、ララさんのことだよね。『けす』とか、凄く物騒な言葉なんだけど。
「な、なに、なに、どうした」
『あのメス、むらのなか、うろうろ』
『けっかいのある山の方にも、はいろうとしてる』
『はいれないけどねー』
『ぼくじょうものぞきにきた』
『ホワイトウルフみて、にげてた』
『それに、やたらと、ケニーにからんでる』
『ケニー、めいわくそう』
『ラルル、ふきげん』
『ガンズもわかってる』
『むらのくうき、わるくなってる』
「えぇぇ……」
風の精霊たちだけでなく、土や光の精霊まで、文句言ってる。
――何やってるの、ララさん。
さすが精霊指定要注意人物。
家や山のことをやってて、村の方には顔を出していなかったけれど、たった3日でそこまで空気が悪くなるかな。
「はぁ……『けす』のは待ってね。ちょっと様子見に行ってみようか」
ハチミツ採取を諦めた私は村に向かうべく、スーパーカブを駐車している小屋の方へと向かうのであった。





