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山、買いました ~異世界暮らしも悪くない~  作者: 実川えむ
冬ごもりに向けた晩秋の過ごし方

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第443話 パートナー(1)

 畑仕事が一段落した(というか、させた)おかげで、村は大勢の冒険者たちの帰郷をネタにして、種族関係なくお祝いムードで盛り上がっている。

 明るいうちから村の中央ではワイルドボアの丸焼きが始まり、あちこちで酒盛りで盛り上がっている。

 ちなみに、このワイルドボアは前にエイデンからもらった貢物。食べきれなくて、私が『収納』に貯めてた物。美味しいワイルドボアの肉のことを考えると、『廃棄』や『売却』するのも勿体ないし、村で何かある時にでも使えばいいかと、そのままにしておいた。

 そう言いながら、これがあと何体か『収納』されてたりするんだよね(遠い目)。

 丸焼きは私一人じゃ出来ないんで、村人たちに任せるのが一番。

 ジュージューと焼ける音を聞きながら、私は自前の梅酒をちびりちびり飲んでいる。


「へぇ、リリスさんとケイトさんは東の村で、幼馴染だったんかい」

「ええ」


 村のおばちゃんの問いに、右手にスピーディー(ダチョウもどき)の唐揚げ、左手にバカラモの串焼きを持ちながら、ニコニコと笑みを浮かべ答えるリリスさん。

 ケイトさんに至っては、大きなジョッキにエールをなみなみと注いで、豪快に飲んでいる。二人とも美人さんなのに、なんか、サバサバしてる。

 

 ちなみに、狼獣人だけの村っていうのが、獣王国には何か所かあるらしい。その中でも東にある大きな村が、リリスさんとケイトさんの村なのだとか(ネドリたちの村は中くらい)。

 出会いのキッカケは、リリスさんたちの村の依頼をボドルさんとコントルさんで受けた時だそう(その時は、まだネシアは合流してなかった)。

 その当時、リリスさんもケイトさんも、冒険者になりたての新人だったらしい。


「ケイトがコントルのことを追いかけるとか言うものだから、私までついていくはめになって」

「ついていくはめって……リリスだって、ボドルのこと気にしてたくせに」


 ちなみに、ボドルさんとコントルさんは29才と28才ってことで、私と同世代。パートナーの2人は22才なんだとか。

 ……リア充め。


「結婚式はあげていくんだろう?」


 また別のおばちゃんが、ワクワクした顔で問いかける。

 獣人で『パートナー』と言われているのは、まだ結婚前の関係ということらしい。婚約とかそういう感じなんだろう。

 結婚自体は、どこであげてもいいらしいんだけど、狼獣人はちょっと違うようで、夫となる相手の生まれた村であげるのが一般的なんだとか。

 だから、こうしてパートナーを連れて帰ってきたってことは、そういうことになるらしい。


「ああ、そうなんだ。なにせ、ケイトもリリスも腹に子供が……」

「なんだって!? ちょいと、ケイトちゃん、酒なんか飲んでんじゃないよっ!」

「えぇぇ!?」


 ボドルが照れくさそうに言ったかと思ったら、おばちゃんにビールを取り上げられて、叫ぶケイトさん。


「なんで酒飲んじゃダメなのよ」


 不満そうに聞いてくるケイトさん。


「あんたがどうこうじゃない。腹の子に悪いって言ってるんだよ」

「え?」


 妊娠中の飲酒が、お腹にいる子供に悪影響(脳障害とか)があるという話は、私が前にママ軍団と飲んだ時に話したことがあった。その情報が、おばちゃんたちの間で共有されてた模様。

 

「し、知らなかった」

「だから、止めときな。あんたらもだけど、子供が一番苦労するよ」

「う、うん」


 ジョッキはまだ半分以上残ってたようで、名残惜しそうな顔をしているケイトさん。隣に座ってたコントルさんが、苦笑いしながらジョッキを受け取って、飲み干していた。

 飲み干される直前のケイトさんの顔が、あまりにも可哀想だったので、お手製の梅シロップの水割りを渡してあげた。


 ――これでアルコール、帳消しになったらいいんだけど。


 そう思いながら、私はワイルドボアの肉にかぶりついたのだった。


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