第428話 果物、万歳(果樹園)
シャリシャリと梨を食べる子供たち。
くし切りにした梨がどんどん減っていく。
「おいしー!」
食後のデザートにと思って、子供たちに果樹園で梨を採ってきてもらった。
精霊パワーのおかげなのか、この梨も普通のものより大きい気がする。それに、ずっしり重い。まだ上の方が青かったので、味が薄かったりするかなと思ったけれど。
「……甘い」
ジューシーなのは言うに及ばず、予想以上に甘かった。
「こんな果物、初めてです」
エリーが目をキラキラさせながら、何個目かの梨に手を伸ばしている。
彼らが言うには、このあたりでは、こういう果物はないのだとか。
以前、エイデンがダンジョンで採ってきたワサの実が、似ていたといえば似ていたけれど、ここまでジューシーではなかった(どちらかといえば林檎に近い)。原産地は北の方らしく、この辺りには出回らないそうだ。
そういえば、こちらの果物といえば、前にネドリにお土産で貰った種が果物の種だったはず。あれって、『収納』にしまいっぱなしかも。
「まだ、いくつか青いのが残っていたはずだ」
「そうなのね……まだ食べる?」
エイデンが最後の1個に手を伸ばしたので、皮を剥いていない梨を手に取りながら皆に聞くと、コクコクと勢いよく頷く子供たちに笑ってしまう。
果樹園に植えてある木で、ブルーベリーと桑はもう時期が終わってる。
今、実が生っているのは梨。去年は植えただけで、実がなることはなかったけれど、今年は立派な木に育っているし、実もかなりの数になっているようだ。これは精霊たちとハチたちのおかげだろう。
他には、みかんとオリーブ、栗の木がある。どれもまだ、実がなっているのを確認はしていない。
特に栗は『桃栗三年柿八年』というだけに、異世界で精霊たちの力があっても、難しいのかなと思っていた。しかし、立ち枯れの拠点で桃が生っているのを確認してるので、栗だって可能性はないとはいえない……はずだ。
「あ! そういえば、こんなのひろった……これ、なーに?」
ボルトが笊の底にあったモノをつまみだした。
「え、マジ?」
……緑のイガ。
ちょっと小さいけど、掌サイズ。これは確実に。
「栗だわ」
「くり?」
「くりだわ?」
「うん、『くり』っていう木の実。このイガの中に実が入ってるの」
「えー、トゲトゲのなかー?」
「どうやってたべるの」
私もイガが割れて、そこから茶色い実がのぞいている映像しか見たことがない。だいたい、スーパーで売ってるのは、すでにイガのない状態。
まいったなぁ、と思ってたら、エイデンが素手で割った。
「え」
「さすがー」
「白い実なんだな」
エイデンは、指で一つだけつまんで、そのまま、食べた。
「ちょ、ちょっと!?」
ゴリゴリと音をたてて食べていたエイデンが、渋い顔に。
「……マズイ」
「当たり前でしょ!」
私だって、白い栗の実なんか見たことはない。絶対、熟してないヤツだから!
そもそも生で栗は食べないよ!
「これ、熟してたらイガが茶色に変わってるはずなのよ」
「ああ、なるほど」
他にも緑のイガが落ちてなかったか確認したけれど、それはなかったらしい。
明日にでも、栗の木の様子を見に行ってみようか。
――もしかして、栗ご飯、できるかも。
ちょっとだけ期待してしまった私なのであった。





