第424話 ご飯のおともと、私の悪い癖
ホームセンターで色々と買い物を終えたので、今度はスーパーへ食材購入に向かう。
自分の手(というよりも、ほとんどは精霊の力)で作った新米が食べられると思うと、一緒に食べる味噌汁や漬物も欲しくなるわけです。
自家製の梅干しと合わせるのも楽しみだけれど、他にも色々、ご飯のお供が欲しくなる。
「明太子でしょ、鮭の切り身も買っておかなきゃ」
漬物のコーナーでは野沢菜漬けとキムチをゲットする。白米と食べたら、美味しいに違いない。
食料品売り場で、ルンルン気分で気に入った食材をカゴへと入れていく。
色んな種類のふりかけに目移りし、なめ茸の瓶と海苔の佃煮の瓶を手にして悩む。
そして今度は、缶詰の棚に来て目に入るのはツナ缶。
――おにぎりにして、ツナマヨもいいね。
何気にちびっこたちが、ツナマヨおにぎりが好きだったりするのだ。
ツナ缶、まだあった気がするけど、念のため、と3缶セットをポンポンッとカゴに入れていく。
缶詰のグリーンカレーも気になったけれど、それよりも目についたのは、高級そうな肉そぼろの缶詰。牛の絵が描いてあるから、牛肉、それも牛タンのそぼろだ。
――肉そぼろか。そぼろ丼もいいね。
肉そぼろは、魔物の肉をミンチにしてもらったのを使って、作り置きして『収納』してある。それも大きなタッパー3つ程。
ホカホカご飯に、肉そぼろと炒り卵がのっているのを想像したら、お腹が空いてきた。
――お昼、食べてなかったわ。
急いで食材を選んで買い物を終えると、いざ、フードコート!
「うわっ、凄い混んでる」
すでにランチタイムも終わりの頃なのに、空いている席が見当たらない。
さすが夏休みだ。
大荷物なのもあって、フードコートを諦めた私。車に荷物を載せると、帰り道で見つけた蕎麦屋に入ることにした。
古びた建物から、けっこうな老舗感。田舎のせいか値段がお財布に優しかったのは、助かった。
頼んだのは、ざるそばに天ぷらの盛り合わせのセット。
蕎麦がくるまでの間、スマホで脱穀からの流れの復習をする。
「脱穀して、籾摺りして、精米……ん? 籾摺り?」
そこでハッとする。
――脱穀機では、籾が取れない!
脱穀機では、あくまで、稲から籾殻のついたままのものを分離するだけ。これはまた別の作業が必要だったことを、すっかり抜け落ちていた。
今更それに気が付くとか、馬鹿過ぎる。
思わず、古びたテーブルに倒れこみ、しばし、呆然。
「はい、お待ち……って、大丈夫かい?」
「あ、はい」
小柄なおばあちゃんが、蕎麦と天ぷらの載った大きなお盆を持ってきた。天ぷらのいい匂いが鼻をつく。
久々に蕎麦屋で食べる蕎麦に、舌鼓。正直に言えば、現実逃避。
「……とりあえず、ちゃんと乾燥させないと精米は出来ないし」
行儀が悪いと思いつつも、蕎麦をすすりながら、スマホでチェック。調べてみると、一応、籾摺り機なるものもあってネットで買えそうではあるけど、すり鉢でも出来そうだ。
うちにあるのは、小さなすり鉢。一食分の籾摺りで、どれくらい時間がかかるのか、想像できないけど、まずは、やってみよう。
「……蕎麦、うまっ」
ズルズルッと音をたてながらすする私なのであった。





