第423話 稲刈りと、脱穀機・精米機を買う
久しぶりに軽自動車に乗って、私はホームセンターに向かっている。
最初、山の中を走っているうちは窓を開けていたけれど、平地に下りた途端、あまりの熱気にすぐに窓を閉めてエアコンに変えた。
あちらも暑いは暑いけど、こっちに比べたらだいぶマシなのを痛感する。
こちらの天気は、真っ青な青空。山の方には、でかい入道雲が浮かんでいる。まさに『ザ・夏』という感じの風景。でも、下手をすると、帰りにはどしゃぶりになったりして。
嫌な予感を感じつつ、私はハンドルを握る手に力が入る。
キャサリンたちが王都に帰って1週間ほど経った頃。
ログハウスの敷地に植えた稲が、秋本番を待たずに、すっかり黄金色になってしまった。その上、これ以上放置するわけにもいかないくらい、穂が垂れて、物によっては、もう少しで地面につくくらいになってしまったので、稲刈りをすることにしたのだ。
田んぼ自体はそんなに広くはなかったけれど、腰を曲げて稲を刈るという作業は、普段やらない動きだけに、腰にきた。一人で頑張っちゃったせいもあるけど。
事前に、稲を干すための物干しのような物を、ヘンリックさんたちに手伝って作ってもらっていて、そこにどんどん刈った稲を下げていく。
そこそこ広かった敷地が、稲穂を干す場所で埋まってしまったのは、ご愛敬だ。
ぶら下げられている稲が気になるのか、黒猫モードのマリンと、その隣でウノハナたち三兄弟が匂いを嗅いでいる様子が、ちょっと可愛い。
ちなみに、ウノハナの下半身は、まだ少し薄い。
さすがに状況が状況だったからか、ムクも揶揄うまではしなかった。
ウノハナに、あの時、何を投げつけられたのか聞いたのだが、彼女もよくは覚えていないらしい。
安易に尻尾を使うな、何の為の風魔法だ、とビャクヤに怒られてシュンとしてたウノハナだったけれど、今はけっこう元気だ(下半身薄いけど)。
エイデンにも聞いてみたけれど、彼もよくわからないらしい。エイデンもわからないとか、怖すぎる。
そして今、ホームセンターの駐車場へと車を乗り込む。
確か今日は平日だったはずだけど、意外に混んでいるのは、夏休みのせいか。
「さてと、今日は脱穀機と精米機っと」
ついでに、何か面白い物でもないかと、ホームセンターの中へと入っていく。
目的の脱穀機の売り場に着くころには、肌寒いくらいになっていた。空調効きすぎだ。
さすが田舎のホームセンター。本格的な脱穀機も置いてあったけれど、ちょっとデカくて、軽自動車には載らなそう。
「あとは……あ、これ足踏みでできるヤツ」
これだったら、ガズゥたちにお願いしてもいいかもしれない、などとズルいことを考える私。
店員さんに聞いたところ、現品しかないらしく、現品か取り寄せになるという。ちょっと迷ったのだけれど、現品は値引きしてくれるというので、そのまま買うことに。
その流れで精米機も聞いてみると、自宅用の精米機の他に、ホームセンターの裏手にコイン精米機があると教えられた。何それ、と思って見に行ってみると、自販機みたいなのがででんと置かれていた。
「え、こんなのがあるの」
へぇ、と思いながら見ていると、まさに精米にきたご夫婦が現れたので、その場を譲る。旦那さんが抱えている袋の感じだと30キロくらいありそうだ。
しばらくすると、なかなかの音をたてながら精米を始めた様子。
「……大量なら、こっちが便利かもしれないけどなぁ」
買い出しのついでに精米するというのもアリではあるけど、何十キロもあるのを持ち運ぶ力はない(あちらでは問題はないんだけど)。
「それに、食べたい時に精米したいしねぇ」
結局、小型の精米機を買ってしまったのであった。





