第420話 王太子、再び、謝罪する
ウノハナたちを厩舎に残し、私たちは、ゆっくり歩きながら村へと向かった。
エイデンの両腕にキャサリンとサリーが抱きかかえられている。普段なら、きっと嬉しそうにキャッキャと騒いだかもしれないが、さすがにそんな気力はないのだろう。ぺたりとエイデンの首元に張り付いている。
一生懸命にウノハナの世話を手伝ってくれた二人だっただけに、疲れてしまったのだろう。サリーに至っては、ウトウトし始めている。
私たちの両サイドをホワイトウルフたちが護衛のようについてくる。シロタエたちは、ログハウスの厩舎で、眠っているウノハナのそばにいる。
静かな山の中を、歩く足音と、鳥の鳴き声が聞こえてくる。
そんな長閑な空気の中、私は精霊たちが、何をやらかしてくるのかの方が心配だったりする。特に、シロタエたちが(相手の)血でまみれた状態で戻ってきた姿を見た後だけに、あんまり酷いことになっていなければいいなと。
悶々と考えているうちに立ち枯れの拠点まで来ていた。
「あ、エイデン、先に行ってて。ローズマリーを少し採っていきたいの」
「……わかった」
もさもさに育っているローズマリーの枝を、チョッキンチョッキンと切っていく。
キャサリンのベッドサイドに置いてもらう用と、念のため、キャサリンの家に植えてもらう苗用だ。
こっちにも似たような植物はあるらしいのだけれど、効能がかなり違うらしい、というのはオババさん情報。
「モチヂュキ様っ!」
ローズマリーの枝を抱えながら村に入っていくと、真っ青な顔の王太子が駆け寄ってきて、片膝をついて頭を下げた。
その後をクロンメリン卿とディルクが続くように、片膝をつく。
――うわっ、なんじゃこりゃ!
この状況に固まる私。
「あ、あの?」
「大変、大変っ、申し訳ございませんでしたっ!」
あー、ベタベタ女の護衛たちのやらかしの件か。
「頭をあげてください」
「しかし……」
「まぁ、なんというか、殿下が指示した訳ではないですし」
部下の失敗の責任ということでいえば、彼が頭を下げるのは当然なんだろうけど。
許せることではないんだけど、アレの責任取らせるのも、なんとなく理不尽というか。
だって、絶対、悪いことしたって思ってないと思うのだ。ベタベタ女たち。
それに。
「……たぶん、それ相応の報いを受けてると思うんで」
「そ、それは」
「さぁ……精霊たちの気分次第ですから、私には、何とも」
私の言葉に一層青ざめる王太子たち。
一応、ほどほどに、とは思ったけど、私の気持ちが通じてるかはわからない(遠い目)。
「それよりも、キャサリンたちが頑張ってくれたので、うちの子もなんとかなりましたから」
「そうなんですね!」
キャサリンの名前が出ただけで、目がキラキラになって復活してるよ。
いいのか、王太子。そんなわかりやすくて。
でも、すぐに真面目な顔に戻った王太子。
「取り急ぎ、陛下にはゴンフリー侯爵家の件は連絡を入れましたので、あちらでも対処していただけるかとは思います(これで、キャサリンへの攻撃がなくなるといいのだが)」
「うん? 連絡?」
「ええ。私には緊急連絡用にと、伝達の魔道具を持たされているのです」
そんな便利な物があったの!
しかし、よくよく聞いてみると、冒険者ギルドのような大きな組織や、高位貴族の家などには置いてあるものらしく、それなりに高価な物らしい。
ちょっと欲しいと思ったけど、起動には魔力が必要らしく、私には使えないことが判明。まぁ、あったとしても、誰に連絡するんだよ、という話ではある。





