第414話 魔道具と武器
村の中は、いつもの賑やかさは鳴りを潜めている。
私はネドリやエイデン、ハクたち、それにクロンメリン卿と一緒に、モリーナの作業場兼自宅の前で待っている。今、王太子一行が中に入っていて、全員が入れるほど広くはないからだ。
待っている間、クロンメリン卿はエイデンに興味があるらしく、手合わせを、とお願いしているようだ。
「クロンメリン卿は命が惜しくないと見える……」
ネドリの呆れた声に、私は苦笑い。
お願いされている当の本人は、嫌そうな顔で断っている。
たいして見どころのある場所のない、うちの村。
そんな場所で、彼らの視察というのが、この村だけなのか、他の場所もなのかが気になるところだが、私としてはキャサリンとサリー以外は、山の方に入れるつもりはない。
「頂いてよろしいのですか。アラン様」
モリーナの作業場兼自宅から王太子とキャサリンが出てきた。キャサリンは手元を嬉しそうに見てから、王太子へとキラキラした目を向けている。
「ああ、エルフ製の魔道具は高額な物が多く、専門店でないと手には入らないのだ。まさか、このような村で其方に渡せるような物と出会えるとは思わなかった。素直に受け取ってくれ」
「ありがとう存じます」
何を買ったのか気になるところだが、彼らの後ろから出てきたモリーナのほくほく顔の様子からも、いい値段の物が売れたんだろう。
そのままヘンリックさんの作業場の方に向かうと、そこでは護衛たちの感嘆の声が聞こえてきた。
「ヘンリック殿、この剣はもしや」
「素材にアダマンタイトが含まれております」
「やはり!」
一番興奮しているのはクロンメリン卿のようだ。剣を見ただけで素材がわかるって凄い。
男性陣の盛り上がりについていけなくなったのか、キャサリンとサリーが先に出てきた。
「男の方って、本当に武器や防具がお好きですわね」
「女性がアクセサリーや洋服の買い物で盛り上がるのと同じだと思えば……」
「……五月様の言うとおりですわね」
彼らが出てくるのを待っている間に、王太子から何を貰ったのかを聞いてみると、右手にはめていた細めの金色に光るブレスレットを渡してきた。
ブレスレット全体的に波打つ細い線が描かれ、深い緑の石が嵌められている。ブレスレットの裏には、象形文字みたいなのが彫られていた。
「ほお。それは守護の力のあるブレスレットだな……モリーナにしては上等な物を作ったものだ」
私の手にあったブレスレットを、エイデンがつまむ。
「壊さないでよ」
「壊すものか(しかし、この程度ではアレの悪意は弾けまい)」
「あら、もしかして、まだそれを持っていてくれていたのね」
1年前、キャサリンたちが屋敷に帰る前にプレゼントしたミサンガが、左手に結ばれたままだ。少し汚れやほつれがあるように見えるのに、ずっと付けてくれているなんて。
「はい! 五月様に頂いた物ですもの」
「わ、わたしも、付けてます!」
サリーが顔を真っ赤にして同じように左手を差し出してきた。
二人ともが大事にしてくれていることが嬉しい。
しかし、初めての冬の手慰みで作った物だけに、粗が目立つ。
「この冬に、色々作ったのがあるのよ。よかったら、見てみる?」
「え! ぜひ!」
男たちはまだ時間がかかりそうなので、私たちは村の大きな東屋の方へと向かった。





