第412話 王太子一行、村に入る
村の中に入った王太子一行は、唖然としていた。
「前とは違うと思っていましたが……こんな立派な村になってるなんて」
キャサリンは、ご令嬢らしくない、ぽかーんとした顔になっているし、彼女の後ろについていたサリーは目玉が落ちるんじゃないかってくらい目を見開いている。
確かに、彼女たちがいた時は、まだ、建物もない野原状態だった。
馬車から降りてきた時から驚いてはいたけれど、石壁の中にこんなに家が建っているとは思ってもいなかったようだ。
「五月様の家と似ていますわね」
「そうね、同じ造りの家だからね」
以前の村の家も数軒あるにはあるが、ほとんどがログハウスになっているから、キャサリンが思うのも当然である。
村人たちには、事前にコントリア王国の王族が来ることは知らせていたので、ほとんどの者たちは家の中に隠れている。
王族ってだけで、面倒事を引き寄せるというイメージが出来上がってるから、当然だろう。それ以上に、王族や貴族に無礼を働いてトラブルになる方が心配ってのもあるらしい。
私、すでに十分、無礼を働いてそう。エイデンが睨みをきかせているおかげで、誰も何も言ってこないだけだろうけど。
出迎えに現れたのは、各種族の代表となる者たち。
狼獣人のネドリ、ドワーフのヘンリックさん、エルフの(不安要素でしかない)モリーナに、司祭のピエランジェロさん。
「ようこそいらっしゃいました」
最初に挨拶をしたのは、変化の魔道具をしていない、そのままの姿のネドリ。
「この村を任されております、ネドリ、と申します」
「……もしや、Sランク冒険者の……」
そう呟いたのは、水の精霊を肩にのせたクロンメリン卿。
「アーサー、知り合いか」
「いえ、殿下。直接はお会いしたことはございませんが……銀の髪に金目でネドリ殿といえば、冒険者であれば誰でもが知っております」
「お前は冒険者ではなかろう」
「……愚弟が、少々」
「ああ、そうだったか……して、その方はSランク冒険者なのか?」
「いえ、殿下。今は五月様の村の管理を任されている、しがない平民でございます」
にっこり笑うネドリ。すんごい胡散臭い顔なんだけど。
「この村は、五月様に救われた者たちの村でございます」
大きく間違ってはいないが、なんかこそばゆい。
「……だから、様々な人種が住んでいるのか」
なるほど、と周囲を見回す王太子の目には、嫌悪の色はない。後をついてきているディルクもクロンメリン卿も興味津々という感じで目がキラキラしている。むしろ、ネドリに対する視線が憧れの人に向ける、それだ。
続いてヘンリックさんとモリーナと挨拶をすると、王太子も目がキラキラ。獣人以上に、ドワーフやエルフと接する機会など、ほとんどないのだとか。
モリーナが何かやらかさないか心配だったけれど、ヘンリックさんがウィンクしてたから、彼に任せておくことにする。
思った以上に好印象の交流に、ホッとした私。
ちなみに、あのリョークと呼ばれてた護衛、最後の最後に悪あがきして、王太子の後について門の中に入ろうとして結界に弾かれただけではなく……風の精霊に吹き飛ばされていた。
かなりの距離、飛ばされていたけれど、あまり心配はしていない。自業自得である。
これがあったおかげで、他の護衛たちもびびってついてこなかったし、むしろ安全性の確認もとれたので、よかったのかも……しれない。





