第404話 店の準備と、お出迎え
さすがにふきっさらしの状態で、お貴族様たちを泊まらせる訳にはいかないだろうということで、急いで建てた宿舎の周りは、村の石壁ほどではないけれど、低めの石垣で囲むようにした。
それに加え、防風林代わりに山の針葉樹を移植したり(『ヒロゲルクン』大活躍)と、それなりの体裁は整えられたと思う。
そして今、私は小さな小屋の中で、ドワーフのヘンリックさんとお話中。
壁には小さな鍋がいくつか並んでいる。ドワーフ製の上等な鍋なのは、見る人が見ればわかるらしい(わからない私は……)。
「とりあえず、品物は一通り、棚に並んでいるから、大丈夫だろ」
「オババさんのところは、子供たちが手伝ってるみたいだしね」
実は教会の建物の向こう三軒両隣に、小さな店を置くことにしたのだ。
せっかく貴族や王族などの金持ちが来るんだったら、村で作った物(狩った物も含む)を買ってもらって、お金を落としてもらおうじゃないか、と、ヘンリックさんたちドワーフの面々から言われまして。
店といっても、『タテルクン』で『小屋(床:コンクリート)』ってヤツ。そんなに立派なものではない。
種類としては、金物屋、雑貨屋、食料品、肉屋、薬屋の5種類。店番は基本、変化の魔道具を付けた獣人たち。
『ばしゃがくるよ』
店の準備の手伝いをしている私に、精霊たちがこっそり教えてくれた。
馬車の音は、獣人たちにも聞こえていたようで、変化の魔道具を付けている者を残し、ヘンリックさんたちは村の中へと戻っていく。
「いよいよかぁ」
ネドリの予想では、手紙が届いて2、3日という話だったのだけれど、実際には5日目にあたる今日、馬車がやってきたようだ。
こちらとしては、余裕をもてたからありがたいけど。
「エイデンは」
『かりのさいちゅうっぽい。よんでこようか』
「ありがと。ビャクヤたちは」
『ここに』
「お、おお」
ビャクヤだけではなく、ハクとユキの番のスノーがいた。
こんな大きなホワイトウルフを見たら、いきなり攻撃とかしてこないかな、と、ちょっとだけ心配になる。
「とりあえず、出迎えにいきますか」
耳や尻尾のない人族の格好のネドリに促され、私たちは宿舎のある方へと向かう。
「……かなりいますね」
「多すぎじゃない?」
実際、こちらに向かってくる馬車は、キャラバンか、と思うくらい、長い列になっている。馬車の周りには護衛の騎士っぽい人たちが馬に乗ってきてる。
「1、2、3……7台の馬車に、護衛もかなりの数ですね」
「うわー」
色々と面倒くさそう~、と思っていたところに、エイデンが空からやってきた。今日も、黒一色のイケメンさんだ。
「待たせたか」
「ううん、そうでもない……なにが狩れたの?」
「ああ、ワイルドグリズリーの大物がいてな」
ご機嫌なエイデンの話を聞いているうちに、先頭の馬車が宿舎の敷地の入口に止まった。
なんか見覚えのある、すごく金かけてます的な馬車に、嫌な予感。
馬車のドアが開き、そこから顔を出したのは、前に司祭様といっしょに来ていた生意気な男の子。その後から、見事に禿げあがった頭の巨体が現れた。
「うわ、ハゲロ司祭だ」
一気に、気分が下がったのは言うまでもない。





