第400話 ホワイトウルフと孤児たち
水浴び場が、ホワイトウルフたちの露天風呂状態の中、私もジーンズを膝くらいまで巻き上げて、足だけ水にいれている。
日差しのせいで、濡れてた服もすでに乾いている。
「わー! すごーい!」
いきなり聞こえてきた子供の声に振り向いてみると、孤児院の子供たち数人が目をキラキラさせながら走ってきた。その後を、年長組のベシーちゃんがついてきている。今日は彼女が子守り担当のようだ。
「こんにちは。サツキ様」
ニコニコしながらやってきたベシーちゃん。13歳って聞いてるんだけど、私と身長が大して変わらない。
「こんにちは。今日はどうしたの?」
聞いてみると、子供たちを連れて薬草を探しに来たんだとか。
私は知らなかったけれど、どうもドッグラン周辺には、傷薬に使うハプン草が多く生えているそうで、私も名前だけは覚えていたけど、未だに見分けはつかない。
そのハプン草をオババさんのところに持っていくと、傷薬かお金のどちらかをくれるらしい。小さい子が多いから、傷薬がもらえるのはありがたいのかもしれない。
子供たちの背中を見ると、リュックっぽいものを背負っている。以前、私がガズゥたちにあげたリュックを参考に、ママ軍団が作ったらしい。
中を見せてもらったら、使い古されたジッパー付きビニール袋の中に、ここに来るまでに採れた薬草が入ってる。
「きゃー!」
子供たちの楽し気な声に、目を向けると、水浴び場からあがってきたホワイトウルフがブルブルッと身体を振って水を飛ばしたようだ。
「落ちないように気を付けてねー」
水浴び場の深さは私の腰くらいなので、大きい子であれば大丈夫だろうけれど、小さい子たちは危ない。万が一があっても、ホワイトウルフたちがいるので大丈夫だろうとは思うけど。
「ほらほら、早くハプン草探しに行くよ!」
「はーい」
ベシーちゃんの声に、素直に返事をした子供たちが集まってきた。
村からここまで来るのは、子供には結構な距離がある。よく見れば、みんな、けっこう汗をかいていた。
「じゃあ、行く前に飴ちゃんあげるから、整列~!」
「きゃー!」
「やったー!」
自分用に買っておいた熱中症対策用の飴を『収納』から取り出して、一人一人の口の中へ。
「ちゃんと水分補給忘れないようにね……ベシーちゃん、気を付けてね」
「はいっ……行くよ~」
子供たちが元気にベシ―ちゃんの後を追いかけていく。
そしてその後を3頭のホワイトウルフたちがついていく。子供たちの護衛みたいなものだろうか。
……あれ?
3頭の後を1頭だけ、色がグレーの小柄な子が付いていってる。
「ねぇ、ウノハナ」
『なぁにぃ?』
「あのグレーの子って」
『あー、フォレストウルフのメスね』
「あ、やっぱり」
まさか、あの獣王国の拠点で出会った妊婦だったフォレストウルフか、と思ったら違った。あの妊婦の子供なのだそうだ。
前に見たときは柴犬サイズの可愛らしい大きさだったのが、それよりは一回り程大きくなっただろうか。それでもホワイトウルフたちと一緒にいると、だいぶ小さい。
なんでも、うちのホワイトウルフ(さっきの3頭の中のうちの1頭)に一目ぼれしたらしく、ここまで追いかけてきたらしい。情熱的だ。
その追いかけられているホワイトウルフもまんざらでもないそうなので、いいのだろう……いいのだろうか?
種族が違うのに大丈夫なの、と聞いたら、意外とその辺は緩いらしい。
……まぁ、仲良くやってくれれば、それでいい……。





