第394話 偽物の冒険者
村の門の前には4人の人族の冒険者が、縄でくくられて転がっているのを、カスティロスさんの背後から覗き込む。
「くっ、解きなさいよっ!」
4人の中で、未だに元気なのは女の冒険者。怒鳴りちらす元気さに、びっくり。
他の男たちは、全員素直……ってわけじゃないか。女の冒険者といっしょにいた男は、ギロリと周りに立っているエルフたちを睨んでいる。
「この人たちは、なんなんです?」
「本当に、申し訳ない」
カスティロスさん曰く、予定外に小麦を買いつけたせいで、荷馬車の数が増えてしまったので、護衛をケイドンで追加をしたのだという。
と言っても、契約範囲は獣王国の国境の村まで。そこから先はエルフの護衛が迎えに来る予定になっているらしい。
その短期での依頼に応募してきたのが、この2人だったのだそうだ。
一応、この男女2人組はそれぞれBランクの冒険者なのと、ギルドの受付で聞いた感触も悪いモノではなかったので、信用したんだそうだ。
『こいつら、にせものー』
『にせものー』
光の精霊たちが怒りでびょんびょん飛んでて、ちょっと怖い。
それを感じ取ってるのか、エルフたちも顔色悪い。
「偽物って……?」
「は?」
カスティロスさんまで驚いている。
『ほらっ!』
「痛っ!」
「グッ!?」
光の精霊の一声で、パリンッという何かが壊れる音がした。
「……誰だコイツは」
騒いでいた男女の冒険者二人の、容貌がまったくの別人に変わったのだ。
赤髪の女の冒険者が、ダークブラウンの髪で鋭い目つきの女に、大柄な男はスキンヘッドで頬に傷がある顔に。
二人の側に、壊れた魔石が落ちている。
「変化の魔道具!?」
モリーナさんだって作れるんだから、他の魔道具師でも作れるだろう。
でも、うちでもそう数はない。なにせ、素材が高価な物だったり、採取が難しい物があると聞いている。
かなり稼いでいる冒険者なのか、スポンサーが付いてるのか。
「え、じゃあ、本物の冒険者は!?」
『……う~ん、だいじょうぶみたい~』
飛び交ってた精霊の中から、風の精霊が教えてくれた。
ケイドンの街の宿屋で、本物の二人とも体調を崩して、いまだに寝込んでいるらしい。もしかして、こいつらに嵌められた?
「うわ、お気の毒」
「……まさか、偽物だったなんて」
「後はお任せしても?」
「はいっ」
悔し気に顔を歪めていたカスティロスさんだったけれど、目が物騒な感じにギラついてる。彼の背後に、ゆらゆらと禍々しい黒いモノが揺れているような気がした。
……ほどほどに、お願いします。
後で分かったのは、捕まった4人は帝国出身の同じパーティで、案の定、我儘姫の依頼を受けてやって来た冒険者たちだった。
うちの村の存在は、すでに獣王国の方でも少し伝わっていたようだ。
ただ、どういった村なのかまではわかっていなくて、村の存在がわかった時期もあって、獣人の村の可能性も考えられていたのだとか。
それに、魔の森の拠点から続くウッドフェンスと桜並木からも、うちの村が怪しい、となったそうだ。
それを調査しているうちに、うちの村に向かうグルターレ商会に目をつけたらしい。
ちなみに、荷馬車に乗ってた2人は姿が見えなくなる魔道具を使って乗り込んでいた。これも、かなり高価な魔道具らしい。
私は、そんな物もあったのかと知って、ちょっとゾッとした。
……捕まった冒険者たち?
どうなったのかは、私も知らない(遠い目)。
+ + + + + + + +
前のページでも追記しましたが、
荷馬車から転げ落ちてきたのは、獣人ではありませんでした。
修正済みです。
失礼しました<(_ _)>





